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覚え書:「ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功、評者・福岡伸一」、『朝日新聞』2012年9月30日(日)付。

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ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功

評者・福岡伸一(青山学院大学教授・生物学)

■あり得たもう一つの「人類」

 人権、人命、平等の尊重。我々人類にとってあまりにも普遍的な規範は、実は意外なことに2万数千年ほど前に起きたある偶然の上に成り立っている。ネアンデルタール人の消滅。化石が発見された当時、学者たちは、ヒトの祖先のものだとみなした。

 しかしここ十数年のあいだに事態は大きく展開した。全く不可能だと思われていた化石中の残存DNAを解析する方法が編み出されたのだ。

 ドイツではネアンデルタール人再検討の機運が高まった。博物館秘蔵の国家的至宝クラスの化石をくり貫(ぬ)いて、DNAを取り出したいと考えた。成功する確率は極めて低い。言ってみれば、日本なら金印の一部を削って元素分析にかけたり、箸墓古墳の発掘を行ったりするような大英断である。情熱が道を開いた。

 結果は驚くべきものだった。ネアンデルタール人はヒトの祖先ではない。両者は、並行して進化してきた異なる種。つまり交配は不可能。

 発掘された遺構には花が供えられていた。死を悼み、来世を信じるような知性と文化を持ちながら、異なる種としての人類がもう一つ現存していたら。クラスに数人のネアンデルタール人が交じっていたら。世界は全く違ったものになっていただろう。

 しかし話はこれで終わらない。広範なDNA解析の結果、ネアンデルタール人とヒトとの間にはわずかな混血の痕跡が明らかになりつつある。一体何を意味するのか。アフリカから旅だったヒトはヨーロッパでネアンデルタール人と出会った。そのとき交流があり、極めて稀(まれ)な確率で、子供ができたということである。しかしその後、ネアンデルタール人は消えた。なぜ。かくして最新科学は私たちの出自と原罪に、新たな問いを投げかけた。『ネアンデルタール人』は若き考古学者の活躍を中心に、『化石の』はDNA解析の現場を丁寧に記述して、どちらも極めてスリリングな本。

     ◇

 『ネアンデルタール人』朝日選書・1365円/おの・あきら▽『化石…』講談社現代新書・798円/さらしな・いさお

    --「ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功、評者・福岡伸一」、『朝日新聞』2012年9月30日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012093000018.html

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Carroll B. Merriman

投稿: Carroll B. Merriman | 2012年10月30日 (火) 18時24分

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