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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 『38%』に働きかける工夫を=湯浅誠」、『毎日新聞』2012年10月26日(金)付。

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くらしの明日 私の社会保障論
「38%」に働きかける工夫を
湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長
「支えるのは誰か」という議論
 世界47カ国の人を対象に「政府は、自力で生活できない人に対応する責任があるか」と聞いた、海外機関の調査結果がある。「全く思わない」「ほとんど思わない」と答えた人の合計は、米国28%▽フランス17%▽韓国12%▽中国9%▽英国8%▽インド8%▽ドイツ7%ーーだった。
 「自力で生活できない人」と聞いて、どういう人をイメージするかで、各国の違いはあるかもしれない。ただ、おおむね1割前後の人が「思わない」と考えるのが、一般的な国のあり方なのだろう。米国が3割近くに達しているのは「さすが自己責任の国」という感じがする。
 しかし「思わない」人の比率が、米国よりもさらに高い国が存在する。私たちが暮らす日本だ。実に38%の人が「全く思わない」「ほとんど思わない」と答えている。この数字は、調査対象の47カ国でトップだった。
 この国で「自力で生活できなくなる」ということは、人々のこうした考え方にさらされながら暮らすことを余儀なくされる、ということだ。
 おそらく、主語の「政府」を「家族」に変えて「家族は、自力で生活できない人に対応する責任があるか」と尋ねれば、回答はだいぶ変わるだろう。「まずは家族で何とかするべきだ」という価値観がいかに根強いかは、芸人の母親の生活保護受給騒動でも明らかになった。
 この国で「自力で生活できない人の支援」を政策化・制度化するのがいかに難しいかは、容易に想像できるだろう。ただちに「そんなことをして何の意味があるのか」「資金は限られているのだからもっと他に使うべきだ」という批判にさらされるし、実際にさらされてきた。
 そのようななかで現在、厚生労働省を中心に「生活支援戦略」の策定が進んでいる。孤立死対策や就労支援、家計管理のサポートや貧困家庭の中高生支援などを柱とした総合的な支援体系を構築するーーというもので、来年の通常国会への法案提出を目指しているという。
 背景には、従来「自力で生活できない人」を支えてきた血縁(家族)・地縁(地域)・社縁(会社)などのコミュニティーが弱まり、「支える力」が低下している現実がある。「家族や会社が何とかしてくれる」という想定は、徐々に効かなくなってきているのだ。
にもかかわらず、政府がこうした人たちに対応する責任があると「思わない」人が、38%もいる。これでは、周囲に困難を抱えた人たちがいても、現状は放置され、状態は深刻化し、気分は沈み、社会は弱体化するだけだろう。
 その38%に働きかけ、理解を広げていく知恵と工夫が、私たちに求められている。
ことば 生活支援戦略 厚労省が9月末に素案を発表し、年内に最終案をまとめる。生活困窮者向けの「相談支援センター」設置など、生活保護を受ける前段階の支援を充実させ、保護制度も見直す。就職活動を積極的にする人には保護費を加算する一方、就労意欲の審査を厳しくするなど「アメとムチ」を使い分け、就労促進で保護費を抑える姿勢を鮮明にした。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 『38%』に働きかける工夫を=湯浅誠」、『毎日新聞』2012年10月26日(金)付。
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