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覚え書:「【書評】満洲浪漫 長谷川濬が見た夢 大島幹雄著」、『東京新聞』2012年11月25日(日)付。

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【書評】満洲浪漫 長谷川濬が見た夢 大島 幹雄 著


◆国策の理想と現実
[評者]川崎 賢子 文芸・演劇評論家。著書に『彼等の昭和』『宝塚』など。

 長谷川濬(しゅん)は甘粕正彦の自死に立ち会った男である。ロシア語を学び、旧満洲(まんしゅう)国にわたり、外交部から弘報処を経て満映(満洲映画協会)に身をおいた。満洲国において文化工作や宣撫(せんぶ)活動は重要視された任務であり、満映の理事長・甘粕は同時代のヒットラーやスターリンと並んで大衆文化における映画の力を高く評価する権力者だった。
 長谷川は旧満洲国の国策にかかわりつつ、満洲の文学運動においても中心的な役割を果たした。「満洲浪曼」という雑誌によって活躍した。
 しかしながら四十歳目前で敗戦を迎えた彼に、戦後日本社会での暮らしは困難を極めた。映画館の夜警やCIC(対敵諜報(ちょうほう))の活動、ナホトカ行き貨物船の通訳、ドン・コザック合唱団招聘(しょうへい)の通訳などを務める合間に、彼はおよそ百三十冊にも及ぶノートを残した。名付けて「青鴉」。本書はそれをもとに書きおこされた長谷川濬の評伝である。そこには渡満の動機や満洲国の理想と現実の落差が痛みと共に記されている。
 失意の日々は、満洲でえた結核とのたたかいの日々でもあった。戦後の苦難は、長谷川の満洲イメージをも実際より「夢」に近づけているかもしれない。情報活動はロマンだけで出来ようはずはないだろうし…。
おおしま・みきお 1953年生まれ。サーカスプロモーター。著書『ボリショイサーカス』ほか。
 (藤原書店・2940円)
<もう1冊> 
 『長谷川四郎集-戦後文学エッセイ選(2)』(影書房)。長谷川兄弟の末弟、濬の弟である作家のシベリア回想など。
    --「【書評】満洲浪漫 長谷川濬が見た夢 大島幹雄著」、『東京新聞』2012年11月25日(日)付。

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