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覚え書:「異論反論 新駐米大使が『県内移設』発言をしました=佐藤優」、『毎日新聞』2012年12月5日(水)付。

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異論反論 新駐米大使が「県内移設」発言をしました
寄稿 佐藤優

沖縄の力見くびるな
 2001年1月に発覚した外務省の元要人外国訪問支援室長による内閣官房報償費(機密費)詐取事件をきっかけに、同省の改革が行われた。
 外務省事務次官経験者が駐米大使となり、首領(ドン)として君臨しネットワークをつくる。それを資金的に支えていたのが要人外国訪問支援室長だった。外務省の腐敗体質をなくすために事務次官は最終ポストになるという改革がなされた。しかし、今秋、11年ぶりに佐々江賢一郎氏が事務次官から駐米大使に栄転した。佐々江大使は11月27日に着任後、初めて記者会見を行った。<(佐々江氏は、)ワシントン市内で大使着任後初の記者会見を開き、米軍普天間飛行場移設問題について「現在の安全保障環境上、沖縄県内に移設することが抑止力の維持につながる。米政府や米議会と意志疎通を図りながら進めていきたい」と述べ、名護市辺野古への移設を進める考えを示した。/県が日米両政府に養成している日米地位協定の改定については「日本政府としては修正せずに対応するという立場だ」と述べ、改正に向けた米政府との協議に否定的な姿勢を示した。>(11月29日「琉球新報」電子版)
 沖縄では、米兵2人による集団強姦致傷事件、さらにこの事件の直後、別の米兵による住居侵入と中学生への傷害事件が発生した。日米地位協定を抜本的に改定し、刑事事件を起こした米兵に対して部分的な治外法権を認めるような現行制度を変更し、他の人々と等しく法の管轄に服させることを、沖縄全体が求めている。さらに沖縄県宜野湾市の普天間飛行場の辺野古移設に関しても、仲井真弘県知事、稲嶺進名護市長をはじめ、沖縄選出の全国会議員を含む、保守、革新を問わずすべての政治エリートが反対している。
 外務省の首領である佐々江氏の発言は、外務官僚が信じるところの国益のために、沖縄を犠牲にするという宣言だ。「現在の安全保障環境上、沖縄県内に移設することが抑止力の維持につながる。米政府や米議会と意志疎通を図りながら進めていきたい」という発言は、「たとえ辺野古への移設ができなくても、海兵隊は必ず沖縄に置く。米政府・米議会と話をつければ、沖縄の民意は力で押し切ることができる」という意味だ。

国家統合に深刻な影響
沖縄に日本離れの懸念
 日本の陸地面積の0・6%を占めるに過ぎない沖縄県に在日米軍基地が74%も所在するという過重負担で構造的に差別されている沖縄県民を同胞とみなす気持ちが、佐々江氏には欠如している。氏は沖縄の底力を過小評価している。沖縄では、そう遠くない過去に琉球王国という国家があったという歴史の記憶がよみがえりつつある。中央政府が沖縄の名誉と尊厳を軽くみる状況が続くならば、沖縄は主権回復を試みることになる。佐々江氏の発言が日本の国家統合に深刻な悪影響を与えている。
さとう・まさる 1960年生まれ。作家。元外務省主任分析官。「電子書籍『キンドル』にはまっています。紙の本では品切れになっている五味純平『虚構の大義 関東軍私記』(文春ウェブ文庫)を読んで、当時と似た状況が現下日本で進行していることに気がつきました」
    --「異論反論 新駐米大使が『県内移設』発言をしました=佐藤優」、『毎日新聞』2012年12月5日(水)付。

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