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覚え書:「私の社会保障論 投票を促すことの難しさ=湯浅誠」、『毎日新聞』2012年12月21日(金)付。

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暮らしの明日
私の社会保障論
投票を促すことの難しさ
湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長

求められる「共感の技法」

 昨年の震災・原発事故以来初となった今回の衆院選は、終わってみれば自民党への再度の政権交代をもたらし、投票率は戦後最低だった。低当票率をもって「自民党を支持した人は決して多くない」と言う人がいるが、他の政党はさらに低い支持しか集められなかったのだから、自民党の相対的優位は変わらない。むしろ今回は「いかに一人一人を投票へと促すことが難しいか」を痛感した。


 投票期間中、主にインターネットを活用しながら、投票を呼びかけたり政策を比較したりするサイトが多数できた。運営した人たちはそれぞれ一生懸命だったあし、私も少しだけ協力させてもらったが、期待した結果は生まれなかった。もちろん、それらの努力がなければ、さらに低い投票率になっていた可能性があるのだから「意味がなかった」ということはない。ただ、ネット上の呼びかけに「もちろん行くよ!」と力強く答える人たちを見ていると、この人たちは、呼びかけられなくても積極的に投票に行く人たちなのかもしれない、と思う。
 問題は、そもそも選挙に関心のない人は、なかなかこうした呼びかけにも反応してくれない、ということだろう。テレビや新聞などで報じられても、関心のない人はそもそも見ていないし、見ても記憶にとどめてくれない。それは、私が貧困問題を訴える中で数限りなく経験してきたことだ。関心のないところに関心を呼び起こすことは、本当に難しい。
 社会保障に対する関心や理解も同じだ。病院通いを欠かせない人は、医療費の増減に気をもむだろう。しかし、健康体の人に「関心を持ってほしい」といっても、その大変さは想像しにくい。子育て支援の充実は、すでに子育てを終えた人たちにはなかなか響かない。高齢者の将来への不安は、若者の理解を得にくい。
 人は誰でも、自分の生活実感に基づいて社会を見ている。それを超えてもらうためには「共感の技法」が必要だ。押し付けがましく説教しても、相手は逃げるだけだ。


 選挙にしろ、社会保障にしろ、訴えるべき核となる部分は大事にしつつも、さまざまな背景や価値観を抱えた多様な人々が、自身の生活実感のリアリティーと結びつけて共感しやすいように、他面的な呼びかけをネットワーク型で構築する必要がある。
 もし、今回投票した59%の人たち一人一人が、関心のないもう一人を投票に赴かせることができれば、投票率は100%になる。「そんなことはあり得ない」と言わずに、参院選までの約8カ月という時間を意識していきたい。社会保障のありかたを考える上でも、参院選は再び大事な選挙になるのだから。

今回の衆院選結果 12党による乱戦の結果、自民党が294議席と圧勝。公明党を加え衆院選で3分の2の勢力を確保した。民主党は57議席の惨敗で野党に転落した。ただ、自民党の投票率(比例代表)は27.6%で前回(26.7%)並み。小選挙区の投票率は59.32%と戦後最低となり、低当票率と政党の乱立による票の分散が、自民党に有利に働いたとの見方もある。
    --「私の社会保障論 投票を促すことの難しさ=湯浅誠」、『毎日新聞』2012年12月21日(金)付。

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