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覚え書:「今週の本棚・この3冊:近代日本のスキャンダル=奥武則・選」、『毎日新聞』2012年12月23日(日)付。

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今週の本棚・この3冊:近代日本のスキャンダル=奥武則・選

 <1><決定版>正伝・後藤新平 2(鶴見祐輔著、一海知義校訂/藤原書店/4830円)

 <2>白蓮れんれん(林真理子著/集英社文庫/700円)

 <3>ピカレスク 太宰治伝(猪瀬直樹著/文春文庫/780円)

 当事者にはだれもなりたくない。でも、他人のことなら、それが大好き。ゆえに、世に喧伝(けんでん)されるスキャンダルは尽きることがない。明治・大正・昭和各時代から一つずつ取り上げる。

 明治の相馬事件。舞台は旧相馬藩主の相馬子爵家。家令らが「瘋癲(ふうてん)」(精神障害)を理由に当主を自宅内に監禁したのが発端。相馬家旧臣を名乗る錦織剛清(にしごりたけきよ)なる人物が、当主の異母弟を担ぐ家令らの陰謀として糾弾した。当主が死ぬと、彼は「毒殺」として家令らを告発する。黒岩涙香率いる「万朝報(よろずちょうほう)」は、「相馬家毒殺騒動」の連載など大々的な紙面展開で錦織を後押しした。死んだ当主の墓を発掘して遺体を解剖するといった猟奇的な経過もあった。結局、「毒殺」は否定され、錦織は誣告(ぶこく)罪で懲役刑となる。

 『<決定版>正伝・後藤新平 2』は、第四章が「相馬事件」。後藤は錦織の支援者の一人だった。告発状や診断書など資料も豊富で、詳細に事件の経過と内容を知ることができる。

 大正の白蓮(びゃくれん)事件。柳原伯爵家に生まれた〓子(あきこ)は九州一の炭鉱王・伊藤伝右衛門のもとに嫁ぐ。彼女は歌人白蓮としても世に知られ、「大正三美人」の一人と言われた美貌の女性だった。「大阪朝日」は連載記事「筑紫の女王」でその優雅な生活ぶりを取り上げた。だが、「筑紫の女王」は経済的には豊かであるものの愛なき伝右衛門との十年に及ぶ生活を捨て、若き弁護士・宮崎龍介のもとに走る。「大阪朝日」が伝右衛門に宛てた白蓮の「絶縁状」を掲載すれば、これに対抗して「大阪毎日」は「絶縁状を読みて〓子に与ふ」と題した伝右衛門の文章を連載した。当時の新聞のフィーバーぶりはものすごい。

 『白蓮れんれん』は、門外不出だった白蓮と龍介の書簡を縦横に使った伝記小説である。練達の女性作家は、「大正」という時代の雰囲気を伝えつつ、偶像化することなく、愛に生きた一人の女性として等身大の白蓮を描いている。

 昭和の太宰治心中事件。心中未遂、自殺未遂を繰り返した太宰は、一九四八年六月、山崎富栄と東京・三鷹の玉川上水で入水心中した。よく知られた事件であり、「太宰文学」に関する評論も含めれば、関連書は枚挙にいとまない。

 『ピカレスク 太宰治伝』は膨大な取材をもとに、書名のように「悪漢小説」の主人公として太宰を描いている。凡人の理解を超える太宰治その人の人生(「太宰文学」ではなく)を読み解いている。
    --「今週の本棚・この3冊:近代日本のスキャンダル=奥武則・選」、『毎日新聞』2012年12月23日(日)付。

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