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「変われば変わるほど変わらない」。

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 「クソッタレの世の中に噛み付いて生きて行こうとずっと努力してきた。でも、それはもうやめにしよう。クソッタレの世の中だからこそ、傷つき、涙している人たちがいる。俺はその人たちに寄り添いながら生きていこう」(義家弘介『ヤンポコ ーー母校北星余市を去るまで』文春文庫)
 「クソッタレの世の中」という言葉に注意しよう。この言葉には、後にふれるヤンキーの社会に対する関心の希薄さにも通ずるような、曖昧な汎用性がある。つまりいつの時代でも通用することば、ということだ。
 義家は確かに変わったのかもしれない。変わっていないのは社会が「クソッタレ」であるという認識である。そんな社会に正面からぶつかっていくか、あるいは社会の犠牲者に寄り添うのか。いずれにしても義家は、まず社会を否定するところから「闘い」をはじめようとしている。つまり、それこそが彼の「変わらなさ」である。
 僕の持論はこうだ。人はしばしば変わることを口にする。しかし人が本当に変わることは難しい。いや、むしろ、こう言うべきか。「変われば変わるほど変わらない」。僕がしばしば引用するフランスの諺だ。実のところ、これは僕の人間観のもっとも根本にある原理のひとつである。
 ただしこれを「しょせん人は変わりっこないんだから、がんばっても仕方ない」という諦観と思われては困る。僕はこのことばに、永劫回帰にも通ずる真理をみているのだと言えばおわかりいただけるだろうか。「人の変化」を肯定するためにこの言葉を用いているということは伝わるだろうか。この言葉にはまた、変化というものが、なんらかの恒常性や普遍性を担保にしなければ起こりえないという意味も含まれているのだ。
    --斉藤環『世界が土曜の夜の夢なら  ヤンキーと精神分析』角川書店、2012年、133ー134頁。

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斉藤環さんが指摘する「人はしばしば変わることを口にする。しかし人が本当に変わることは難しい」ということを本当に実感するようになった。

若い頃は、人間はチャンスと決意があれば、今の自分とは違う自分になれる……例えばそれを「成長する」だとか「変革する」だとかいう表現で……とは、字義通り思っている訳ではないし、全てが全てそういう訳ではないけれども、そういう事例もあるだろうとは思っていた。

しかし、それを全否定に近い形で否定するようになったのは、年老いた所為で保守的になって、「クソッタレの世の中」に対してやぶにらみしながら、「しょせん人は変わりっこないんだから、がんばっても仕方ない」という諦観と思われては困る。

例えば、何かの社会的境遇や立場が変わることや、ライフスタイルが変わることを、単純に「変わること」と同定することはできないのではないかという話です。

それはそのひとの全人性を表象する唯一の表示でもないし、例えば、貧乏だった人間が成功して金持ちになって、マナーや要件やらの全てを身につけたとしても、そのひと自身が「変わった」わけではない。そう当事者とその関係する人間が「変わった」と錯覚しているだけではあるまいか。

例えば、支持している政治的イデオロギーや信仰といった人間の内心に関わる部分が、移動したり、チェンジしたりすることも、人生においておうおうにして存在する。しかしそういった事例も「変わった」わけではないのではないか。

人間が変わるとは、変わらないことを自覚する。もちろん、それは先にいった「しょせん……」という諦観といった保守の退嬰ではない。

ここ数年、「変われば変わるほど変わらない」というものをたくさん見てきた。

人間は「変わるわけではない」。

おそらく深く、そう自覚する……たとえば、「変化というものが、なんらかの恒常性や普遍性を担保にしなければ起こりえないという意味」……ことによってこそ、積極的な肯定的な側面が創出されるような気がしてほかならない。

まとまりにくい雑感ですけど、そういうことを最近よく感じます。

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