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書評:内田樹『呪いの時代』新潮社、2011年。

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相互の違いを踏まえた上で合意形成を目指す気などさらさらない…これが現在の言語空間の支配的体質ではないだろうか。相手を屈服させる為だけに捻出される無数の言葉はまるで「呪詛」のようである。本書は雑誌連載のエッセイを纏めた一冊だが、「呪い」を切り口に現代の世相を浮彫りにする。

勿論、呪詛の背景には、現状を変えたいという苛立ちが存在することは否めない。しかし、「『現実を変えよう』と叫んでいるときに、自分がものを壊しているのか、作り出しているのかを吟味する習慣を持たない人はほとんどの場合『壊す』ことしかしない」。

なぜなら、破壊は創造より楽だからだ。

呪詛を繰り返す者は、破壊するだけでなく、そのことで自身の承認欲求を満たそうとしている。嫉妬や羨望、そして憎悪が一人歩きする現代。著者は生活とぱっとしない「正味の自分」に注目するよう示唆している。

等身大の人間とその生活から言語が切り離された瞬間、呪詛は立ち上がる。

呪詛合戦はやすっぽい「征服感」をもたらすだけで、疲弊を相互に招来する。時代に対する「苛立ち」をぬぐうことは不可能であろう。だとすれば「呪い」ではなく「贈与」へエネルギーを注ぐほかあるまい。本書は、自身の言説を振り返る契機になる一冊ではないだろうか。


関連サイト

http://www.shinchosha.co.jp/book/330011/

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/28694


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