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書評:山下正寿『核の海の証言 ビキニ事件は終わらない』新日本出版社、2012年。

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山下正寿『核の海の証言 ビキニ事件は終わらない』新日本出版社、読了。「一九五四年には第五福竜丸がアメリカの水爆実験による被害をうけた」と学校教科書にはある(実教出版)。しかしビキニで被災したのは第五福竜丸だけではなかった。この矮小化には核問題への規制を伺うことができよう。

第五福竜丸以外にも水爆実験に遭遇した日本船の乗組員が補償も受けないまま病に倒れていった。高知県で高校教員を務める著者は、八〇年代半ばから、その実像に迫ろうと教え子らとともに聞き取り活動を継続。この活動のまとめが本書である。

第五福竜丸事件のあと、二カ月の間に米国は六回の水爆実験を繰り返し、のべ一千隻の日本船が被曝した。ところが政府は、マグロの検査を年末でうち切り、翌年には米国政府と共に幕引き。「いつの時代もしわ寄せが来るのは底辺にいる者」と遺族は語る。

本書は前半が、当時のビキニ海域で操業した人々への聞き取り調査の記録。後半部分が、水爆実験の実際の検証と隠されゆくビキニ事件の経緯の解明と健康問題のその後を扱う。ビキニ事件から日本の原子力開発は始まった…重厚ながら非常に読みやすい一冊。


ええと、それからものすごい蛇足。JCPのしんぶん赤旗および新日本出版は、原子力の問題に対する執念にも満ちた取材と問題の発掘力に驚き、利用すること多々あります。ただ、原子力の是非も、第一義ではない過去についてはそれなりの説明責任は欲しいところ。

JCPは1961年、「原子力問題にかんする決議」において「ただちに設置しなければならない条件は存在しない」としつつも(原子力を人類の福利向上に利用するには)「人民が主権をもつ新しい民主主義の社会、さらに社会主義、共産主義の社会においてのみ可能である。ソ連における原子力の平和利用はこのことを示している」と言葉を綴っている。

先の選挙で、だれでもかれでも「脱原発」と旗印を掲げましたので、JCPだけに問題があるわけではないのは承知しておりますし、その旗印は時局によってさまざま変わることでしょう。しかし、結局はそれを「票田」のために利用する「ネタ」というようなスタンツは……例えば、取材力がすごくとも……辞めて欲しいなとは思います。


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