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覚え書:「書評:『みんなで決めた「安心」のかたち』 五十嵐泰正+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議著」、『読売新聞』2013年01月06日(日)付。

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『みんなで決めた「安心」のかたち』 五十嵐泰正+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議著

評・開沼 博(社会学者・福島大特任研究員)
「安心」の再獲得目指し


 「行政は検査しているって言うけど、やっぱ危ないよ」「いつまでも気にしてたって仕方ないだろう」――

 3・11は、空気のように「あって当然」と思われてきた「安心」が、いつ失われてもおかしくないものであることを私たちに示した。広がる不信感の中、多くの人が放射性物質による食品汚染に戸惑い「どうするか」論じてきた。しかし、誰もが納得できる答えは容易に見つからない。

 本書に記されるのはそんな「神学論争」の泥沼の中心に立たされた者たちが、困難を乗り越え自らの「安心」の再獲得を目指す軌跡だ。

 福島第一原発から200キロ・メートル以上離れているのにも拘
かか
わらず放射性物質を含む雨によって「ホットスポット」を持つことになった千葉県柏市。社会学者でもある著者が所属する「ストリート・ブレイカーズ(ストブレ)」は商工会議所青年部が立ち上げ1998年から活動を続ける「ジモト」の若者による町おこし団体だ。震災前から、ストブレメンバーの農家を中心に作物の直売所運営もしていた彼らは「つながりはじめてきたこの街の生産者と消費者の関係を、原発事故なんかで失いたくない」と「安全・安心の柏産柏消」円卓会議を立ち上げる。農家・スーパーマーケット・飲食店・主婦といった多様な利害を持つ者が、行政や研究者と同じ立場で議論し合い出口を探る。消費者を巻き込んで作物や農地の線量測定を行い、ウェブやイベントを通して情報発信する。

 「もう農業やめろってことですかね…」。メンバーが絶望の言葉を呟
つぶや
いた夜もあった。だが、「顔の見える関係」の中にジモト農作物に対する消費者の安心感が戻りはじめる。

 読みやすい構成だ。円卓会議参加者への顔写真入りインタビューでは、等身大の「ジモトへの思い」が綴
つづ
られる。それでいて、地域への住民参加のあり方や闘争・告発型社会運動の課題に、実践を通した鋭い考察もなされる。3・11が風化しようとする今、読まれるべき論考だ。

 ◇いがらし・やすまさ=筑波大准教授。都市社会学、国際移動論
 ◇柏市周辺の消費者、生産者、流通、飲食店などが参加。

 亜紀書房 1800円
    --「書評:『みんなで決めた「安心」のかたち』 五十嵐泰正+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議著」、『読売新聞』2013年01月06日(日)付。

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http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20130107-OYT8T00873.htm

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