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覚え書:「異論反論 北方領土を巡る重要証言がなされました=佐藤優」、『毎日新聞』2013年01月16日(水)付。


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異論・反論
北方領土を巡る重要証言がなされました
寄稿 佐藤優

歴史の歪曲を防ぐ英断
 日露関係の専門家を震撼させる重要証言を東郷和彦・元外務省欧亜局長(京都産業大客員教授)が行った。1992年3月、東京で行われた日露外相会談において、当時のコズイレス・露外相が渡辺美智雄外相に対して、平和条約締結以前に歯舞群島、色丹島を日本に引き渡すという内容のロシア側秘密提案を行った。
 〈提案は当時渡辺美智雄外相とコズイレス外相の会談の席上、口頭で行われた。ロシア側は①歯舞、色丹を引き渡す手続きについて協議する②歯舞、色丹を引き渡す③歯舞、色丹問題の解決に倣う形で国後、択捉両島の扱いを協議する④合意に達すれば平和条約を締結する--と打診。エリツィン大統領の了承はとっていないかったが、日本側が応じれば正式提案とする可能性があったという。歯舞、色丹の返還を先に進めるという点で昭和31(56)年の「日ソ共同宣言」とは違った内容だ。さらに協議の行方によっては国後、択捉の返還の可能性も残した。東郷氏は提案の特徴について「平和条約を待たずに歯舞、色丹を引き渡すという譲歩をロシア側はしている。日本には四島一括の看板を取り下げ歩み寄ってほしいと養成している」と指摘する。〉(1月8日付産経新聞)

事実と異なる記事が出て悩んでいた東郷局長
 この秘密提案は、存在しないことになっているが、実際には日本側通訳が作成した手書きの記録が残っている。外務省ロシア課には、課長しか鍵を持っていない施錠キャビネットがある。そこには、公式には存在しないことになっている文書、具体的には裏交渉の記録や、異性問題でトラブルを起こしてロシアの秘密警察に揺さぶられた外務官僚に関するメモが保管されている。92年秘密提案の記録も、廃棄されていないならば、宇山秀樹ロシア課長が管理するキャビネットに保管されているはずだ。
 東郷氏がこれまで公にしなかった秘密提案について証言した背景には、以下の事情がある。昨年12月24日付北海道新聞朝刊に、この秘密提案の内容を知っている当時のクナーゼ露外務次官が、歯舞、色丹の2島引き渡しで平和条約を締結し、その後、国後、択捉について協議するという趣旨の提案だった--と、事実と異なる話をしたからだ。この記事が出た後、東郷氏は「事実と違う内容が一人歩きすると、今後の北方領土交渉に悪影響を与える」と悩んでいた。筆者は電話で東郷氏に「2島返還での平和条約締結に日本がどう反応するかという、インテリジェンス(情報)工作が行われているのだと思います。東郷さんは当時の日本側関係者からも、この提案を日本が拒否した経緯について聞いているはずです。誰かが証言しておかないと、歴史が歪曲されてしまう。ロシアが平和条約締結依然に歯舞群島、色丹島の引き渡しを打診したということは、国後島、択捉島の返還にも含みをもたせたということです。この事実を後世に伝える義務が私たちにはあります」と述べた。東郷証言によって歴史の歪曲が防がれたことを筆者は歓迎する。
さとう・まさる 1960年生まれ。作家・元外務省主任分析官。「石川達夫『チェコ民族再生運動』(岩波書店、2010年)を読み、ドイツ人に同化すると見られていたチェコ人が民族意識を確立する過程は、現下沖縄をめぐる状況の理解にも重要と感じました。
    --「異論反論 北方領土を巡る重要証言がなされました=佐藤優」、『毎日新聞』2013年01月16日(水)付。

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佐藤氏が指摘する関連報道(1)

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「平和条約待たず2島返還」 ロシアが平成4年に「北方領土」秘密提案
2013.1.8 11:09 (1/2ページ)[領土・領有権]

東郷和彦元欧亜局長

 北方領土交渉をめぐりロシアが平成4(1992)年、平和条約締結前の歯舞群島、色丹島の返還と、その後の国後、択捉両島の返還に含みを持たせた提案を秘密裏に行っていたことが7日、分かった。外務省で領土交渉に携わった東郷和彦元欧亜局長が産経新聞に証言した。これまで提案の存在自体は知られていたが詳細が判明したのは初めて。旧ソ連時代とは異なり踏み込んだ提案だったが、四島返還の保証はなかったため日本側は同意せず「幻の提案」として終わった。

 提案は当時の渡辺美智雄外相とコズイレフ外相の会談の席上、口頭で行われた。ロシア側は(1)歯舞、色丹を引き渡す手続きについて協議する(2)歯舞・色丹を引き渡す(3)歯舞・色丹問題の解決に倣う形で国後、択捉両島の扱いを協議する(4)合意に達すれば平和条約を締結する-と打診。エリツィン大統領の了承はとっていなかったが、日本側が応じれば正式提案とする可能性があったという。

 歯舞・色丹の返還を先に進めるという点で昭和31(56)年の「日ソ共同宣言」とは違った内容だ。さらに協議の行方によっては国後・択捉の返還の可能性も残した。東郷氏は提案の特徴について「平和条約を待たずに歯舞・色丹を引き渡すという譲歩をロシア側はしている。日本側には四島一括の看板を取り下げ歩み寄ってほしいと要請している」と指摘する。

 これまで東郷氏は著書『北方領土交渉秘録』(新潮社)で「92年提案」と存在は認めていたが、交渉が継続していることもあり内容については明かしてこなかった。ところが昨年12月、当時のロシア外務次官ゲオルギー・クナーゼ氏が北海道新聞の取材に対し「92年提案」について、歯舞・色丹の引き渡し手続きに合意した後に平和条約を締結し、その後、日露間でふさわしい雰囲気ができれば国後・択捉を協議する、との内容だったと述べた。

 東郷氏は会談には同席していなかったが、クナーゼ氏の発言について「事実関係が異なる。この内容が独り歩きしたら90年代の日露交渉がわからなくなる」として証言を決断した。

 日本側が提案を拒否した理由としては、四島一括返還要求を捨てることへの拒否感、もう少し譲歩を引き出せるのではとの誘惑などが挙げられるとした。

 東郷氏は「旧ソ連崩壊後で日露の国力に大きな差があった時ですら四島一括提案ではなかったことを認識すべきだ。(当時と状況は変化したが)それでも今、ロシアは交渉に応じる姿勢を示している。安倍晋三首相にはプーチン大統領と勝負してほしい」と語る。
    --「『平和条約待たず2島返還』 ロシアが平成4年に『北方領土』秘密提案」、『産経新聞』2013年01月08日(火)付、電子版。

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http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130108/plc13010811090003-n1.htm


佐藤氏が指摘する関連報道(2)

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日本との連携を真剣に模索 ロシア秘密提案で佐藤優氏 
2013.1.8 13:47
 佐藤優・元外務省主任分析官の話「1992年は東西冷戦崩壊後直後で、どういう世界秩序になるか不透明だった。秘密提案をしたということは、ロシアが日本との連携を真剣に考えたということだろう。

 2001年12月ごろ、元ロシア外務次官のゲオルギー・クナーゼ氏に会った際、東郷和彦氏が語ったのと同じ内容を聞き、外務省に極秘公電で報告した。クナーゼ氏が提案内容を意図的に変えているのは、2島で動くのか日本側の出方を探るとともに、国内的には高まるナショナリズムのなかで四島返還に行くかもしれない提案をしたことの責任追及を回避する意味合いもあるのではないか」
    --「日本との連携を真剣に模索 ロシア秘密提案で佐藤優氏」、『産経新聞』2013年01月08日(火)付、電子版。

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http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130108/plc13010813490008-n1.htm


佐藤氏が指摘する関連報道(3)

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2島返還 92年に提案 元ロシア外務次官証言(12/24 10:25、12/24 18:03 更新)
1992年の非公式提案などについて説明するクナーゼ氏
 ロシアが1992年、北方領土問題の解決に向け、歯舞、色丹の2島を返還し、国後、択捉の2島の扱いは継続協議とする案を日本側に非公式に提案していたことが分かった。当時のロシア外務次官ゲオルギー・クナーゼ氏が北海道新聞の取材に明らかにした。

 91年までの旧ソ連時代とは一線を画す柔軟な提案だったが、日本側は四島返還を目指す立場から国後、択捉両島の返還の確約を求めたため、立ち消えになった。<北海道新聞12月24日朝刊掲載>
    --「2島返還 92年に提案 元ロシア外務次官証言」、『北海道新聞』2012年12月24日(月)付、電子版。

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http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/429379.html


佐藤氏が指摘する関連報道(4)

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平和条約前に歯舞、色丹返還 92年、ロシア提案 東郷元局長が証言(01/09 06:40)
 ロシアが1992年に領土問題解決に向けて、平和条約締結後の歯舞、色丹の2島返還を約束した56年の日ソ共同宣言に基づき非公式提案をしたとのゲオルギー・クナーゼ元ロシア外務次官の証言について、東郷和彦・元外務省欧亜局長は8日、「証言に誤りがある」と明らかにした。平和条約締結前に歯舞、色丹2島を先行返還するとの内容で、証言よりも日本に有利な提案だったという。

 提案は92年3月、当時の渡辺美智雄外相とコズイレフ・ロシア外相との東京での会談後、行われた。クナーゼ氏を取材した北海道新聞が昨年12月24日報じた。同氏の証言によると、提案は、ロシア側が《1》歯舞、色丹2島を引き渡す手続きなどに合意《2》平和条約を締結《3》歯舞、色丹2島を日本へ引き渡す《4》その後、日ロ関係の推移を見て、ふさわしい雰囲気ができれば残る国後、択捉2島について協議する―との内容。

 一方、東郷氏によると《1》歯舞、色丹を引き渡す手続きなどに合意《2》協定を結んで歯舞、色丹2島を引き渡す《3》歯舞、色丹にならう形で残る国後、択捉の扱いを交渉《4》交渉がまとまれば平和条約締結する―との内容だった。<北海道新聞1月9日朝刊掲載>
    --「平和条約前に歯舞、色丹返還 92年、ロシア提案 東郷元局長が証言」、『北海道新聞』2013年01月09日(水)付、電子版。

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http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/432368.html

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