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書評:藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、2012年。


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藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、読了。

本書は帝国日本の「コメの品種改良の歴史にひそむ、『科学的征服』の野望」を明らかにする一冊。品種改良に取り組んだ農学者の軌跡は、「生態学的帝国主義」の歴史である。緑の革命はモンサントの現在だけではない。

品種改良と導入は殆どの場合において植民地アジアの抵抗を受けている。新品種の抵抗するにも、改良品種不適応の場合にも、実害を受けるのは一人一人の農民であった。そして育った利潤は、商人や日本の肥料企業が吸収していくのである。

農学者の善意は→「育種技術が社会の矛盾を温存して人間と空間を人間の生活実感を通して支配するこのシステムは、警察権力や軍事力で人間を支配するよりもいっそう持続的で摩擦が少なく、それだけに、かえってとてつもなく厄介な統治システムでもある」。

食に直結する技術改良の輝きに私たちは注目しがちだが、その裏側には(日本においても)帝国主義・植民地主義と深く結びついた負荷が存在する。そしてそれが戦後のアメリカの食料戦略とも関連し合っている。生-権力の眼差しを見つめ直す必要を諭す一冊。

本書は稲の品種改良を行ない植民地での増産を推進した「帝国」日本の実像を明らかにする一冊。著者の『ナチスのキッチン』(水声社)と併せて読みたい。

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