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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 就活に見る親の経済格差」、『毎日新聞』2013年02月01日(金)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
就活に見る親の経済格差
山田昌弘 中央大教授

階級社会が到来するかも
 大学3年生の就職活動がスタートした。そんな中、大手書店で「親の就活コーナー」を見つけた。親のための就活の心得といった内容の本が大量に置かれている。子どもの就職が心配な親が手に取るのだろう。今の就職状況の厳しさを語り、親が出来ること、言ってはいけないことを示すといった内容である。
 確かに、今の学生の親が就職した時代はバブル景気の中、寝ていても大丈夫とはいかなくても、正社員として就職ができないことなど考えられなかった。今は大学が保護者向けの就職講座を開く時代である。ある女子学生は、就職懇談会に参加した母親から「こんなに就職が大変なら、早くお嫁にいってしまえば」と言われたそうである。
 ただ、今結婚相手を見つけるのは就職以上に難しい。学生の親のための婚活講座が開かれるかもしれない。人気企業の説明会の椅子を確保するため、本人と両親がエントリー開始と同時に申し込み、父親の方が当たったと喜んでいた学生もいた。
 深刻な例もある。ある学生の父親が失業し、仕送りができなくなった。彼は学資、生活費を稼ぐためにアルバイトを増やし、就職活動に時間が割けなくなり、就職先が見つからないまま卒業せざるを得なかった。父子ともども失業者になったのである。今の就職活動にはお金と時間がかかるから、今のうちにアルバイトをして貯金しておくという2年生もいる。
 親の経済力には格差がある。そもそも大学に進学する時点でも格差がある。そして高卒者の非正規雇用率は大卒者よりはるかに高い。そして、大学進学後も親に経済的ゆとりがあれば「就活」に専念でき、そうでなければ内定をとれない確率が高まる。特に、大都市で就活をしなければならない地方学生には深刻である。学力に差がなくても、親の経済力が子の就職に影響する時代が到来したのだ。


 私が99年に「パラサイト・シングルの時代」(ちくま新書)を出版し、親の経済状況による若者の経済格差を指摘した時、「親が貧しければ子どもも貧しくなって当然だ」という匿名の手紙が届いた。成人後も、学費も含めて親が子どもの生活の面倒をみるというシステムは、学費が安く就職が容易な時代ならうまく機能したかもしれない。
 今度の税制改革で「孫の教育費なら1500万円まで贈与税を免除する」という案が出された。そんなお金持ちの祖父母がどこにいるのかという議論はさておき、この案は「高等教育費は親負担が当然」という前提に基づいている。このままだと、匿名の手紙で言われたように、親の経済格差が子どもに引き継がれるという階級社会が、日本に到来する日が来るかもしれない。

ことば 大学生の生活厳しく 全国大学生協連が1963年から実施している学生生活実態調査の直近20年比較によると、大学生の1カ月の仕送り額は91年の9万450円が2011年には6万9780円に減った。家電・家具などの耐久消費財支出(半年間)も6万600円(91年)から1万7000円(11年)に激減。逆に奨学金受給率は上がり続けている。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 就活に見る親の経済格差」、『毎日新聞』2013年02月01日(金)付。

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