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「今のところ小康状態を保っていると言っていいのかと思います」が、またしても悪夢再来という拳(涙


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 昨年は第三回のシンポジウムをはさんで、教育基本法の改正、改悪と言ってもいいのですが、それが衆議院、参議院で可決されて、通ってしまいました。その時私共は、来年はひょっとしたら憲法改正が大きな話題になるのではないかと恐れておりましたけれども、幸いなことに参議院で与党が大負けをして、しかも安倍総理が退陣しましたので、今のところ小康状態を保っていると言っていいのかと思います。
 私は一昨日、「日本の青空」という映画を見ました。これは南原研究会のメンバーも大勢見ておりますが、これによっていろいろなことを考えさせられました。今日は長くなるから申し上げませんけれども、同時に、最近私は九州大学医学部出身の浜清先生という優れた解剖学者で日本学士院の会員でもあられますが、その方から、「われわれがあとに残すべきもの、それは今の子どもや孫たちが三〇年後、五〇年五に笑顔で過せる世界である。それを残すために絶対にやってはいけないことがある。それは核戦争、核兵器の使用だ。」と伺いました。浜先生は、昭和二〇年八月、九大生の一年生の時にちょうど長崎で原爆が投下されたのに遭遇されました。長崎大学が爆心地だったのです。当時は長崎医大といったはずですが、全滅して九大に応援を求められて、一年生の学生が本当に修羅場ともうしますか、爆心地に乗り込んだ。その経験は一生忘れられないことで、絶対に核兵器を使ってはいけない、とおっしゃっておられました。
    --鴨下重彦「まえがき(第四回南原繁シンポジウム開会の挨拶)」、南原繁研究会編『平和か戦争か 南原繁の学問と思想』tobe出版、2008年、2-3頁。

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先の自公政権下で、改悪された教育基本法の骨子を構想したのが、政治学者南原繁。さすがに南原はこうした揺り戻しを見る前に鬼籍に入ることになったものの、その意志を継ぐ人々の時代認識は、『平和か戦争か』とのタイトルどおり、よろしい方向に向いていないという危惧が先立ってしまう。

そしてわたしもそのひとり。

うえのシンポジウムは、今から6年前の2007年の晩秋に学士会館で開催されたもので、引用はその挨拶から。

教育基本法から次は憲法改正へという筋道は、自公政権の崩壊によって、「遠のいた」感はあるものの、昨年年末の選挙によって、「悪夢」の「再来」をまたしても予期させるものとなりつつあるのが今現在ではないでしょうか。

再び総理の座に返り咲いた安倍首相は、政権枠組みにとらわれず、まずは憲法を改正しやすくするための超党派連合を模索し、タカ派政治家たちは、その合従連衡にやぶさかでないという。

政権交代後、メディアは鳴り物入りで「景気回復」内閣のような吹聴にまわっているが、参院選がおわれば、実際にどう動くのかわかったものではない。

「平和か戦争か」

戦争をのぞむ人間というのは、決して「自分がいく」とは「決まっていない」から戦争をのぞみ、政策論争としてすり替えてしまう。

現実には、おどらされた人間が戦地へいき、血を流させ・自らも流していく。

そのときになって

「なんで・・・」

と誰何したとしても、火付け役は、

「おまえたちが信任したからではないか」

と居直ることが歴史の常なんじゃないでしょうか。

いろいろと勘弁してほしいことが多いので、警戒的になってしまう。


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