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書評:小林道彦『政党内閣の崩壊と満州事変』ミネルヴァ書房、2010年。


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戦前日本の政党政治と国際協調体制と国際金本位制といった政治経済、国際システムはなぜ崩壊したのか--。本書は第一次大戦後から満州事変に至るまでの政軍関係を分析した一冊。著者は実証的政治過程分析によって鮮やかにその系譜を浮かび上がらせる。

陸軍は内部での権力争いがすさまじく、暴走しやすい体質。著者は史料からその襞に分け入る。政党内閣が機能するためには「強力な首相」と「強力な陸相」の組み合わせがベスト。田中義一は陸相時代は軍を掌握するも、首相になるとコントロールできなかった等々。

全体として、「政党内閣がなぜ崩壊したか」という答えにはもう少し踏み込みが欲しかったのは事実。しかし、政治/軍「関係」が別々に議論される所論が多いなか、複雑な相関関係を丁寧に整理していく力量に驚く。

長い序論は、原敬論といってよい。吉野作造との関係でここに注目してしまう。筆者によれば原敬は軍の「漸進主義的制度改革」を粘り強く目指した人物。参謀本部の解体論も横行するが、皇室を担ぎ上げる軍の「軽挙」を退けようと努力する。

盛岡藩出身の原らしくその忍耐力はすさまじい。伏魔殿に入ってまで、人事的協力を取り付け、ことを運んでいく。軍人が統帥権を振りかざすのは危険であり、皇室は「慈善恩賞等の府」であるべきとの論、現在の象徴天皇制を先取りする構想といえよう。

「田中義一、浜口雄幸、若槻礼次郎、犬養毅……陸軍改革の試み、その意図せざる挫折を描く」。おすすめの一冊です。


http://www.minervashobo.co.jp/book/b56126.html

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政党内閣の崩壊と満州事変―1918~1932 (MINERVA人文・社会科学叢書)
小林 道彦
ミネルヴァ書房
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