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書評:小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、2012年。


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小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、読了。儒教社会から脱皮(西洋化)することが近代日本の歩みであるとの通説を打破するのが本書の狙い。著者によれば「日本の近代化は半儒教的な徳川体制を脱皮し、社会を『再儒教化』する過程」であり、福沢諭吉、丸山眞男も朱子学化の当体となる。

朱子学の革新性とは何か。それは「理」の原理である。超越的な道徳原理としての「理」の概念の登場は、「理」に接近したものが上昇(尊い)するから固定的身分制度を否定し、機会均等の原理を提示した。ただし限界も存在する。理に近づき序列を上げる競争としての機会均等は、競争の苛酷さへと通じるからだ。

戦前の天皇制国家は天皇制という「理」に向かう序列化の闘争だし、毛沢東の水平闘争も形式は同じ。著者によれば福澤の独立自尊の原理は、西欧的主体ではなく朱子学的思惟の形式をとり、丸山の思想も朱子学的拘束を受けているとの指摘もある。

本書は、明治の統治システムとその思想と共振した体制教学の特質を明らかにする。この形式は今現代にも続いている。その実空虚に過ぎない「主体化」によって形式される〈序列化〉の思想的枠組みを西洋的「主体」と錯覚していたとハッとする。

手に取るまでややアクロバティックな印象は否めなかったが、独文を経て韓国へ留学した異色の著者の思考実験は、脳を揺さぶり面白く、なるほどと思うことが多かった。外来思想の土着化と東アジアが共有する文化の関係性を考えるうえで示唆に富んでいる。


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朱子学化する日本近代
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