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覚え書:「書評:『ドアの向こうのカルト』 佐藤典雅著 評・星野博美」、『読売新聞』2013年02月24日(日)付。

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『ドアの向こうのカルト』 佐藤典雅著

評・星野博美(ノンフィクション作家・写真家)
教団脱会の経緯を告白


 東京ガールズコレクションやキットソンというアパレルブランドをブレイクさせたカリスマプロデューサーが、25年間過ごした「エホバの証人」。教団生活からどのように抜け出したかを赤裸々に語ったのが本書。そのオセロゲームのような人生に興味を惹ひかれ、手にとった。

 父親のアメリカ駐在中に母親が入信したため、彼は「証人」の二世である。著者は子供の素直な目で淡々と教団生活を見つめる。異文化であるアメリカと、教団という特殊な社会とも折り合いをつけなくてはならない。しかしこの異文化性が彼を救うことにもなる。日本から来る証人はなぜうつ病が多いのか。なぜ主婦の入信者が多いのか。不幸のオンパレードからの現実逃避ではないのか…。異文化の目を持った著者は、次第に現実に目覚めていく。

 大学進学や就職を無意味と考える教団で、信者は不安定な経済状況を強いられるため、マルチ商法に手を染める人が少なくない。この商品だけが絶対的に正しく、あとはまがいもので信用できないという絶対性、この良さを多くの人に広めようとする布教性など、マルチ商法とカルト教団の仕組みが類似することに著者は気づく。それが組織に対するはっきりした疑念に変容するのに時間はかからなかった。

 彼はとうとう洗脳から解除され、家族や妻、妻の実家の人たちを脱会させることに成功した。ファッション業界のマーケティング事業も波に乗る。彼は断言する。流行も広告も軽い社会的洗脳である、と。かつて教団で徹底訓練された、人を惹きつけるためのプレゼン能力や、論破する戦略、洗脳のノウハウがビジネスの最前線で役立っているのだ。

 めでたしめでたし、なのだが、読後は疑問符でいっぱいになった。スピリチュアル本や霊能者、インターネットによって覆される世界観って単純すぎはしないか? そう思った瞬間、皮肉にも、構築的世界観を奪う宗教の力を思い知らされた。

 ◇さとう・のりまさ=1971年、広島県生まれ。米国で育ち、企画会社勤務などを経て、2010年に独立。

 河出書房新社 1800円
    --「書評:『ドアの向こうのカルト』 佐藤典雅著 評・星野博美」、『読売新聞』2013年02月24日(日)付。

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http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20130225-OYT8T00609.htm

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ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録
佐藤 典雅
河出書房新社
売り上げランキング: 689

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コメント

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