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覚え書:「書評:『戦後食糧行政の起源』 小田義幸著 評・開沼 博」、『読売新聞』2013年02月24日(日)付。

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『戦後食糧行政の起源』 小田義幸著

評・開沼 博(社会学者・福島大特任研究員)
政府主導の管理体制


 日本の食料自給率(カロリーベース)は約4割。だが、食の半分以上を海外に頼る日本で「明日、食糧危機が訪れないか」と懸念する人が多いわけでもない。私たちは日本の食糧行政に無意識の信頼を置いているのかもしれない。

 本書は戦時期から戦後占領初期までに食糧危機の中でなされた「戦後食糧行政」の確立・定着過程に迫る。

 昭和14(1939)年、「朝鮮大旱魃かんばつ」による国内の米不足は、それまで「米穀買い上げによる米価安定策」等に限定されてきた食糧管理行政の脆弱ぜいじゃくさを露あらわにした。農林省は、外貨温存のため外米輸入に反発する陸軍や、米穀強制買い上げを求める内務省の意向を部分的に取り入れつつも「戦時食糧専売体制」の確立に向かい、昭和17(1942)年には食糧管理法が制定される。

 戦局悪化の中、米穀輸入・移入自体が困難になると農林省は内務省と協力して農家に米の供出を求め、メディアは国民に統制順守、開拓・土地改良を促す。だが、終戦後、民主化の中で内務省は廃止になり、農家は供出を拒否し、闇取引が拡大。食糧危機が進み新興政党・新聞による体制批判は強まるが、当初国内自給による自力救済を求めていたGHQに一時的な食糧輸入を認めさせることで危機を突破。戦時下に成立した食糧管理体制は存続・強化されることになった。

 著者はこの過程が食糧管理体制に「様々な利害を吸収する機能」を埋め込んだと見る。平成7(1995)年の食糧管理法施行令廃止まで、半世紀に渡って維持されたこの食糧管理体制が日本の戦後社会を支える食の安定供給を実現した。現在、グローバル化や自由競争の波の中、食糧管理をめぐる利害調整は混迷しているようにも見える。かつてのような政府主導の管理体制強化は望みにくいが、安全なものを安心して食べ続けられるかも不確かだ。「食」への信頼は揺らいでいるように見える。その足元を見つめなおすきっかけになる論考だ。

 ◇おだ・よしゆき=1976年生まれ。慶応大や武蔵野大などで非常勤講師。共著に『戦前日本の政治と市民意識』など。

 慶応義塾大学出版会 5800円
    --「書評:『戦後食糧行政の起源』 小田義幸著 評・開沼 博」、『読売新聞』2013年02月24日(日)付。

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http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20130225-OYT8T00422.htm


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戦後食糧行政の起源―戦中・戦後の食糧危機をめぐる政治と行政
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