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覚え書:「書評:『郷愁と童心の詩人 野口雨情伝』 野口不二子著 評・畠山重篤」、『読売新聞』2013年03月10日(日)付。


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『郷愁と童心の詩人 野口雨情伝』 野口不二子著

評・畠山重篤(カキ養殖業)
孫ならではの秘話


 明日3月11日で東日本大震災から2年を迎える。岩手、宮城、福島の被害は甚大だが、茨城も津波に襲われた。

 筆者の野口不二子さんは野口雨情の直系の孫に当たる。一度生家の「観海亭」を訪れたことがあったが、福島県境に近い北茨城市磯原。国道を挟んで目の前に太平洋が広がる。

 生家を守っていた不二子さんは、津波が来るという情報に、まさかと思ったが、一階にある資料を何回も駆け上がり必死で二階に運んだ。幸いなことに家は傾いたが波は二階まで達せず、貴重な資料は守られたのである。

 不二子さんは語り部として非凡な才の持ち主である。NHKの「ラジオ深夜便」に出演依頼があり、津波の経験談や、雨情の人生観、詩の背景などを語ったところ大きな反響があり、雨情の作品がまだまだ日本人の心の中に生きていることを実感したという。

 そして、生誕130年でもあるので雨情伝の執筆を……との話が持ち上がった。

 世に雨情伝は出版されているが、どちらかというと研究者向けで一般向けのものが少なかったのだ。不二子さんは今まで短いものは書いたことがあるが、まとまったものの執筆はなかったと謙遜されている。しかし、そこは文人の孫だ。直系の近親者でなくては知り得ない秘話を盛り込んだ見事な雨情伝の誕生である。

 津波から逃げる途中、瓦礫がれきの下から民謡が聞こえていたという話を何度か耳にした。人は死を覚悟した時、歌を口ずさむのだ。小生もこの津波でおふくろを亡くした。お世話になっていた老人ホームが波を被かぶったのだ。おふくろが好きだったのは“雨降りお月”。

 生前なぜお嫁にゆこうと決心したかを問うと、“見合い写真が美男子だったから”とケロリと語った。農村と漁村の素封家同士の縁組は、雨情とヒロの縁組と重なる。付録のCDで“雨降りお月”を聞いた。涙、涙であった。

 ◇のぐち・ふじこ=1943年生まれ。茨城県県北生涯学習センター長。99年、野口雨情生家・資料館を設立。

 講談社 2762円
    --「書評:『郷愁と童心の詩人 野口雨情伝』 野口不二子著 評・畠山重篤」、『読売新聞』2013年03月10日(日)付。

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http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20130311-OYT8T00669.htm

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野口 不二子
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