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なぜ建国記念日に反対するか


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 なぜ建国記念日に反対するか

本誌 かつて宮様は建国記念日の問題が出ましたさい反対の意思表示をされたと記憶するのですが……。

三笠宮 私の反対したのは、「二月十一日」という日にちの問題がいちばん大きかったんです。この日を建国記念日にするということに納得しかねたからです。『日本書紀』をみますと、神武天皇の即位は正月朔(ついたち)とあるわけです。
 二月十一日とは書いていない。明治五年にはこの正月元日を太陽暦の一月二十九日と計算し、翌明治六年にはまた変更して二月十一日を紀元節としたわけです。ところがこの計算のモノサシが、歴史学的にみてでたらめだったということなんです。それに建国記念日というのは新しい国に多い。イギリスのようなひじょうに古い国は建国記念日を持っていない。ですから、建国記念日がわからないぐらい古いということを誇ってもいいんじゃないかと思うんです。
 しかし日本の建国記念日は、明治五年にできたばかりで、伝統ある祝日とはいえません。それでもなお建国記念日がつくりたいのなら、シンボリカルな日にすればいいので、『日本書紀』にある正月元日をそのまま建国記念日にすればいい、といったわけです。
 というのは、歴史学的にみると正月元日というのは意味のある日なんです。メソポタミアでも、バビロニア王の即位式は新年祭のときに行われました。
 新年というのは農耕社会における一つのエポックメーキングで重要な祭日なんですよ。だから、日本の場合も、天皇の即位が正月元旦に行われたということが、可能性がないわけではない。
 それと、建国記念日論争当時のもう一つひじょうに世俗的な欲求は、二月に祭日がないので、何かつくりたいということでした。だから、そんなら二月の立春の日を記念日にしたらと妥協案をもち出したわけです。むかしの日本の正月は立春だったろうといわれますから……。

色川 歴史月の学会が反対したのは宮さんのいわれたとおり、学問的根拠がないということと同時に、二月十一日を建国記念日にすると、明治憲法の公布の日や明治時代にこしらえた紀元節と重なってしまう、軍国主義時代の悪しき思い出が復活されるというので反対したんです。

本誌 戦後世代が社会の大勢を占めるようになるとともに、天皇制の問題が繰り返し論議されるようになると思いますが、宮様はどうお考えでしょうか。

三笠宮 これは憲法にもあきらかなように、すべて国民に任せるという気持ちですね。

色川 国民が望むか、望まないかの問題ですね。

三笠宮 そういうことだと思います。

色川 国民投票だな(笑)
    --三笠宮崇仁、色川大吉「対談 帝王と墓と民衆」、『潮』潮出版社、1974年3月、95-96頁。

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「イギリスのようなひじょうに古い国」と言われると、ちょと「ぇ!」とは思ってしまいますが、いわゆる大国のなかでは……もう斜陽してるやんけというツッコミはご容赦を……古い方だからありかと思いつつも、現在の「建国記念の日」がなんらかの適切な根拠に基づくものではないことを明解に、「宮様」が言及する文章でありますし、引用中の末尾のほうで「戦後世代が社会の大勢を占めるようになるとともに……」というリードがありますが、この対談から40年ちかくたった現在、そういうアレもあったのかということは殆どの歴史の向こう側に忘却されつつあるなあ、と思いましたのでご紹介する次第。

もちろん、宮様の意図は別でしょうけど、いわゆる「酷使」さま、こうしたカラクリが存在することには自覚的であって欲しいと思います。

ついでにいえば、戦後、2月11日が祝日に加えられるのは1966(昭和41)年のこと(適用は翌年から)。

1968(昭和43)年が、明治百年にあたるので、その前後から急旋回が始まります。

ちなみに昨年は大正百年。

さてさて、どんな転回がはじまることやら(コワイ


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