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書評:S.グリーンブラット(河野純治訳)『一四一七年、その一冊が全てを変えた』柏書房、2012年。


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S.グリーンブラット『一四一七年、その一冊が全てを変えた』柏書房、読了。ルネサンス黎明期のイタリア。主人公はポッジョ・ブラッチョリーニ。教皇庁祐筆の人文主義「ブックハンター」の物語。歴史を変えるのは活版印刷でもガリレオでもない。古代ローマ詩人ルクレティウスの哲学叙事詩の発見だ 。

ルクレティウスの『物の本質について』(岩波文庫所収)は「神の摂理の否定と死後の世界の否定」する人間讃歌であったから千年以上秘匿された。そのフマニスムはピコ・デラ・ミランドラだけでなく現代科学論をも先取りする。

物語はヴァチカンの狡猾な内部抗争の狭間で続けられる古代ギリシア・ローマの写本の探索のドラマ。再発見に「全てを変えた」分水嶺を見出すが、本書は人と書物、ヨーロッパ出版史をめぐる優れた文化史ともなっている。

最後に蛇足。私は是々非々であればいいと思うから、歴史教科書的二元論とその眼差しから人間の営みを理解しても始まらない。宗教的権威も糞だが、人間中心主義も糞だから。どう軸を糾すかという話。鬼の頸をとることほど無益。


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一四一七年、その一冊がすべてを変えた
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物の本質について (岩波文庫 青 605-1)
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