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書評:浅見雅一、安延苑『韓国とキリスト教 いかにして国家的宗教になりえたか』中公新書、2012年。


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教会成長理論は、一九六〇年代にフラー神学校で始まった新しい宣教学の理論である。フラー神学校の宣教学とは、教会成長を目的として、神学的要素のうえに社会科学と行動科学を統合させた理論であった。それに実践的要素を加えたものが教会成長理論と呼ばれ、やがて宣教学とは分離したひとつの学問となった。
 また、趙鏞基の説く「霊的に満たされ、物質的に恵まれ、病苦から解放される」という「救いの三重の祝福」について、マリンズは、ソウル大学哲学科教授孫鳳鎬の見解を引用しながら「現世の祝福の過度の強調」に帰着すると説明している。現世の祝福とは、現世利益の肯定に置き換えることができる。キム・ヨンジュによれば、キリスト教を信じれば万事がよくなるという説教は、聖書の教えをバランスよく教えているとは言い難いが、「救いの三重の祝福」は現世利益を求める大衆の宗教心と欲求を満たすものとして歓迎されたという(キム・ヨンジュ『韓国教会史』改訂第三版)。純福音協会が現世利益を過度に強調しているという説明になるが、これは韓国のプロテスタント協会に多く見られる特徴である。
    --浅見雅一、安延苑『韓国とキリスト教 いかにして国家的宗教になりえたか』中公新書、2012年、27-28頁。

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世界最大のメガ・チャーチを有し、全人口の3割をクリスチャンが占める韓国。その教勢は政治の動向にも影響を与える。本書は出会いから現在まで、「いかにして“国家的宗教”になりえたか」(副題)を概観、受容の特色を紹介する簡便な一冊。

李朝下、「西学」として理知的側面から受容されたが指導者の欠如が極端な倫理主義を招く。近代化以降は帝国主義との対峙でプロテスタント受容が加速した。そして戦後はアメリカ「流」。大型教会と個別教会の二主義が教勢拡大を促すが問題も多い。

神学畑の認識では韓国のキリスト教とは「聖霊」重視と「民衆神学(恨の情)」とシャーマニズムの親和性に目がいきがちだが、キリスト教を信じれば万事がよくなるという教説が歓迎された(=教勢拡大へ)というのは意外だった(教会成長理論)。

「通史を新書で」というのは誰もの願いであると同時に「限界」ともなる。記述の濃淡に対する指摘は読み手の関心によって容易だが、類書が少ない中では、輪郭を掴める一冊ではないだろうか。本書で初めて知ることも多く、文化内受肉の一事例を学ぶことができる。


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