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書評:西垣通『集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ』中公新書、2013年。


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西垣通『集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ』中公新書、読了。ここ10数年のコンピュータの変化とは、人間に代わっての高速な処理から相互通信性にシフトしつつあることだ。本書は「~2.0」のフレーズに代表されるインターネットを初めとする「集合知」の現在と未来を考える一冊だ。

震災に代表されるように専門家主義の凋落とネットの集合知の台頭しつつある現在。著者は両者に安易に組みしない。知が機能するためには適切な条件の上での運用に限られるからだ。万人参加による透明でフラットなグローバル世界は残念ながら幻想に過ぎない。

本書の肝は何といってもその「人間論」だ。安易な歓迎論、守旧的なプロフェッショナリズムの両者は、対象を完全に正確に記述できるという落とし穴に陥っている。人間社会とは「ローカルな半独立の社会集団」の無数の入れ子構造。その様相を明らかにする。

リアルに実在するのは個々人の主観世界。そして私たちが「ありがたい」と感じる「客観知」のほうこそ人為的な虚像にすぎない。著者の手厳しい主客構造批判は、エアボクシングの熱中をいさめ、相互生成的な「知恵」を創り上げることへのシフトを促す。

本書は「ネットでバラ色」論に食傷気味の読者だけでなく、若い学生に手にとって欲しい一冊だ。認識と参加の地平を新たにする。知が通信で相互生成されるのはネットだけではない。人間のコミュニケーション(教育もその1つ)がそれを記憶・蓄積・創造へと促す。


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