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書評:井上寿一『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』中公新書、2012年。

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歴史の教訓
 以上の戦前政党政治の歴史から何を学ぶべきか、三点にまとめ直してみる。
 第一に、二大政党制よりも連立政権の重要性である。戦前の日本政治は、二大政党制の限界を克服するために、新しい政党間提携を模索した。同様に今の日本政治も、二大政党制の確立を急ぐよりも、民意の複雑な方程式の最適解を求めて、連立政権の再編を試みるべきである。この観点に立つと、二〇〇九(平成二一)年の政権交代は、自民・公明から民主・社民・国民新への連立政権の再編と解釈できる。
 第二に、私たちが求めるべきは、国民と痛みを分かち合える政治指導者である。甘口の利益誘導を図る政治家に用はない。低成長と超少子高齢化社会を前提とするならば、戦時下の国民と同様に、下方平準化であっても、国民は政府による公共財の平等な再分配を求めるだろう。必要なのは、自己を犠牲にしてでも解決困難な国家的な課題に取り組むだけの胆力がある政治指導者である。
 第三に、政治参加に対する国民の責任感覚の回復である。戦前の日本国民は、政党内閣崩壊後も希望を捨てることなく、新しい社会の実現を目指した。私たちも日本政治に対する責任を分有しながら、議会政治の発展に参加し続けなければならない。
    --井上寿一『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』中公新書、2012年、245-246頁。

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井上寿一『政友会と民政党』中公新書、読了。先の政権交代以降の迷走は政治不信に拍車をかけた。考える手掛かりは戦前日本(1925-32)に存在する。本書は二大政党制の成立・展開・崩壊を追跡することで「戦前の二大政党制に何を学ぶのか」(副題)に応えようとする(=機能する条件)一冊。

なぜ戦前の政党政治に注目するのか。一つは日本の二大政党の政治史は戦前にしか前例がない点、一つは時代背景としての格差拡大社会という共通点、一つは「非常時小康」という危機的な状況の類似、即ち3.11後の場当り的錯綜は満州事変を挟む世相と通ずる。

政友会とは元々国家優位の「反政党」。民政党は革新官僚と連携した漸進主義。しかし両者の政策の差異が近似するなかで泥仕合がはじまり……気が付くとという話になる。軍部が「押しつぶした」歴史教科書表記の実相は「自壊する過程」である。


敗戦後もその血脈は耐えていない。「戦前昭和と今の二大政党は悪いところばかり似ている」。民主党が民政党から学ぶべきは官僚を批判するより使いこなすこと。自民党は、政友会があらゆる階層から学び政治を導き出したことを想起すべき、と著者はいう。

本書は著者5部作の4作目(『戦前昭和の社会』講談社、『戦前日本の「グローバリズム」一九三〇年代の教訓』新潮社、『戦前昭和の国家構想』講談社、『理想だらけの戦時下日本』筑摩書房。経済・対外危機とテロを踏まえると、荻野富士夫『特高警察』も併読したい。

以下、蛇足ですが……
しかし、井上寿一先生の、このスパークぶり(2年で5冊・どちらも一般向けながら、総論と各論をフォロー)というのはハンパないとは思いつつも、これもひとつの危機意識なんだろうと思ってしまいました。

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