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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 『議論の府』の自己否定=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年05月15日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
「議論の府」の自己否定 憲法96条改正問題
湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長

 サウナの後、水風呂につかると気持ちいい。頭までつかりたくなるが「水の中にもぐらないでください」の張り紙を見て、ぐっと我慢する。
 そんな時ふと「大金持ちは『このサウナを買い取れば好きにもぐれる』と思うのだろうか」という疑問が頭をよぎる。「おれが気に入らないという」理由でルールを変える。傲慢だが、あり得るかも知れない。
 では、スポーツ選手が「勝てないからルールを変えてくれ」と言うのはどうか。「実力のなさをルールのせいにしても、その人の真の実力は向上しない」という批判が聞こえそうだ。
 あるルールが合理性を失った時「だたtらルールを変えればいい」という発想はあり得る。「ルールだから仕方ない」と忍従するだけではイノベーションは起こらず、違いは「時代が変わって合理性を失ったから」なのか「気に入らないから」「勝てないから」なのかに起因する。
 本格的に検討され始めた憲法96条改正問題はどちらだろうか。
 自民党は憲法改正草案で、現在「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」で発議されるとしている憲法改正条項(96条)を「総議員の過半数の賛成」で足りるとルールを変えようとしている。理由は(1)世界的に見て改正しにくい憲法だから(2)国会での手続きが厳格だと、国民が憲法について意志を表明する機会が狭められるから--だという。
 よく分からない。
 改正しやすいことが無条件に良いことなら、法律も「国民100万人の署名を集めれば改正できる」とすればいい。国会が国民の意思表明のさまたげになるなら「国民100万人の発議で国民投票で決める」とすればいい。だが、そうなったら国会の存在意義はどこへ行くのか。
 「議論の府」としての国会の自己否定--。二つの理由の根底に共通するのは、これだ。
 国民の代表として生活の保障を得ながら、職業的に国全体を見渡し、議論して合意形成を目指す。これが国会の役割だ。自分たちが役割を果たしてこなかったからといって、国会議員としての実力のなさをルールのせいにしても、国会の実力は向上しない。
 私は、議会制民主主義が信用を失墜しているように見える今だからこそ、議会制民主主義を擁護したい。だから、もし議会が、自らの存在意義を否定するような理由で96条改正を持ち出すのなら、国会議員の総辞職とセットにしてもらいたい。
 なぜなら96条改正は「私たちは国会議員として実力がありません」という宣言なのだから。
ことば 憲法96条改正問題 自民党が参院選の公約に掲げたことで、政治の大きな焦点となった。ただ、改憲経験のある米国やドイツも、両院の3分の2以上の発議や議決が必要。日本の改憲要件が他国より特に厳しいわけであない。憲法は時の権力者が一時的な勢いで変えてはならない普遍の原理であり、憲法を国の最高法規たらしめているのが96条だ。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 『議論の府』の自己否定=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年05月15日(水)付。

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