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書評:清水唯一朗『近代日本の官僚 維新官僚から学歴エリートへ』中公新書、2013年。


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清水唯一朗『近代日本の官僚 維新官僚から学歴エリートへ』中公新書、読了。「官僚は顔の見えない巨大な権力であるが、有能な集団であることは間違いない」。だから批判の対象になる。が、私たちはどこまでその内実を承知しているのだろうか。維新~大正(完成期)の歩みを描く本書は一つの標になる。

近代国民国家の官僚制と常備軍を二つの柱とする。そして日本的官僚の起源は明治維新に遡る。実務行政の担い手のとして経験を積み調整能力を発揮する中で政治家になっていく。水平上昇の立身出世の模範型だが、日本で眼にするこのコースは欧米では少ない。

その理由は、全ての優秀な人材が「官僚」に集まるべくした帰結であったといってよい。藩閥の後退は、選挙による政治参加に加え、官僚となることで行政参加の道が平等に開かれた(志しを立てる)。官僚→政治家への道は両者が協働する日本政治の象徴でもある。

官僚を描くことはそのまま日本政治の歩みを描写することになるから本書は、優れた日本政治史の一書ともいえる。そして、人に即した豊富なエピソードは、印象批判の背景に存在する官僚たちの実像を伝える。本書は、安易な官僚批判の前に立ち戻す一冊になろう。

近代日本最大の成功と不幸は、官僚制に人材が集中したことだろう。終身雇用も高等官僚を嚆矢とするように--。制度が人をつくり、人が制度を生成する。本書は新書としては大部ながら、日本の統治内部を描く「目から鱗」の一冊。大学生に手にとってほしい。

以下は蛇足を少々。

先の官僚本で面白かったのは、終身雇用を含め高等文官への人気集中は、(無料の、武官育成の)士官学校・兵学校と双璧を為すのだけど、大正期……僕は大正時代は思想の実験場だとおもっているのだけど)、日露戦後の軍縮で後者の人気が落ち、WWIで上昇して、戦後のゝで下がるというのは興味深い。

そして、それはそれだけ余裕があったのだろうとも思う、加えて、言葉は悪いけど「ひっかけ問題」なんだけど、戦後通産相をつとめる石井光次郎の受験した高等文官試験(1913、筆記)は、「天皇機関説を論ぜよ」とか。石井は美濃部支持で試験官は上杉慎吉w 石井は両論併記で凌いだが、戦前昭和では考えられない話。

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