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覚え書:「今週の本棚・本と人:『漂うモダニズム』 著者・槇文彦さん」、『毎日新聞』2013年06月02日(日)付。


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今週の本棚・本と人:『漂うモダニズム』 著者・槇文彦さん
毎日新聞 2013年06月02日 東京朝刊


 (左右社・6825円)

 ◇大海原で泳ぐ建築家たち--槇文彦(まき・ふみひこ)さん

 世界的な建築家による20年ぶりのエッセー集。1950年代の米国修業時代の回想をはじめ、都市や空間に関する考察、作品論など読み応えがある50編を収める。とりわけ表題作は「建築の現在と未来」をクールな眼差(まなざ)しで分析し、刺激的だ。

 鉄とコンクリートとガラスで作られ、合理性と国際性ゆえに20世紀の<建築の普遍語となった>モダニズム。だが資本主義の肥大や情報化社会の到来により、使命やスタイルが薄まり<なんでもありの時代に突入>したと考察。<五十年前のモダニズムは、誰もが乗っている大きな船であったといえる。そして現在のモダニズムは最早(もはや)船ではない。大海原なのだ>と総括する。

 著者自身「モダニズム建築の正統な継承者」と言われる。「日本と米国の若者に『これからの建築はどうなるのか』と相次いで質問されたことが、これを書くきっかけになりました。大海原に投げ出された若い建築家が泳いでいくには、客観的な現状分析が必要だと考えたのです」

 新たな潮流のうねりも見て取る。一つが風土や文化に根ざした地域的特性を持つ建築だ。西洋中心のモダニズムが消失した結果、<現代のコルビュジエは中近東、アジア或(ある)いは南米に生まれても不思議ではない>と指摘。<現代は極めてエキサイティングな時代なのだ>という。表意(漢字)と表音(かな)文字を併用する日本語の特性が、優れた建築を多く生む一因になったとの分析も興味深い。

 「良い空間を作り出す理性と感性のバランスは、日本人が自然に体得してきたもの。一つの文化現象と言えるのではないでしょうか」

 84歳。海外12カ国でプロジェクトが進み、今秋には米同時多発テロの現場跡地に設計した高層ビルが完成する。インタビューは事務所がある東京・代官山の複合施設「ヒルサイドテラス」で行われた。30年以上かけて設計を手掛けた代表作だ。

 「完成後、建物が長く愛され、使われていくことが大事なのです。そこの中庭もよくカップルが記念撮影していくんですよ」。まっすぐだった表情が、ほころんだ。<文・永田晶子/写真・内藤絵美>
    --「今週の本棚・本と人:『漂うモダニズム』 著者・槇文彦さん」、『毎日新聞』2013年06月02日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20130602ddm015070034000c.html

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