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覚え書:「書評:設計者 キム・オンス著」、『東京新聞』2013年06月09日(日)付。


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設計者 キム・オンス 著

2013年6月9日

◆犯罪者の実存を描く
[評者]郷原 宏=文芸評論家
 最近の韓国文学は韓流ドラマよりおもしろいとは聞いていたが、自分で読む機会には恵まれなかった。この隣国は文学的にはとても遠い国で、詩やドラマや映画はともかく、小説作品はあまり紹介されなかったからだ。その意味で、最近、クオン社から刊行された「新しい韓国の文学」シリーズは、干天の慈雨ともいうべき贈り物である。本書はシリーズ第六巻で、「韓国エンターテインメント小説の最高峰」という触れ込みの作品。
 一言でいえば暗殺者を主人公にした犯罪小説なのだが、アメリカのクライム・ノベルやフランスのロマン・ノワールとはひと味違った東洋的な雅趣があり、五百五十五ページの大冊を一気に読ませる。
 三十二年前、修道院のゴミ箱に捨てられていたレセンは、図書館という名の設計者に引き取られ、暗殺者として育てられる。設計者は暗殺のデザイナー、暗殺者はそれを実行する技術者である。ほかに調査専門の追跡者(トラッカー)と荒っぽい仕事を請け負う殺し屋がいる。
 十五年間、命じられるままに人を殺してきた彼は、業界内部の対立がエスカレートするなかで次第に孤立し、世直しをめざす女設計者とともに起死回生の賭けを打つ。変貌する現代の韓国社会のなかに極限状況を生きる犯罪者の実存を描いて、「新しい文学」と呼ぶにふさわしい第一級のエンターテインメントだ。

 キム・オンス 1972年生まれ。作家。長編『キャビネット』が各国で出版。
(オ・スンヨン訳、クオン・2310円)
◆もう1冊 
 李垠(イウン)著『美術館の鼠』(きむふな訳、講談社)。アジア・ミステリー叢書の一冊。美術館での事件を描く韓国小説。
    --「書評:設計者 キム・オンス著」、『東京新聞』2013年06月09日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013060902000162.html:title]

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