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覚え書:「書評:さらば、食料廃棄 S・クロイツベルガー、V・トゥルン著」、『東京新聞』2013年6月2日(日)付。


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【書評】

さらば、食料廃棄 S・クロイツベルガー、V・トゥルン 著

2013年6月2日

◆飢餓と地球を救う買い方
[評者]小林照幸=作家
 食料廃棄と飢餓は表裏一体…。ドイツ人のジャーナリストと映像作家が自国やフランスなど世界各国の食料の生産、消費、廃棄の現状を取材し警告した。現在、世界人口は約七十億人。うち七分の一が飢餓に悩む。一方、世界で食用として収穫及び生産された食料品の三分の一がゴミとして廃棄されている、という。先進国では、その割合は二分の一にもなるようだ。読み進むほどに、食料廃棄が地球に強いる負荷の大きさを痛感させられる。
 洋の東西を問わず、スーパーマーケットは営業時間の延長と共に廃棄食品が増えた。まだ十分食べられる生鮮食品でも、見た目、賞味期限の頃合いで廃棄し、新品と入れ替えるシステムのためだ。廃棄食料を飼料や肥料にする再利用は限られ、大半は焼却処分し、排出される温室効果ガスが地球温暖化の一因となる。食料廃棄削減で地球温暖化抑制を、と唱える以前に途上国の食料生産の現在を知る必要がある。
 途上国の多くは農業国。森林を伐採して農場を作るが、耕地の大半は輸出用作物の栽培だ。世界の穀物は、肉を大量消費する先進国のために、その多くが家畜の餌になる。これらが地球温暖化と飢餓を加速させている。
 こうした現況を伝え、ドイツをはじめ各国で廃棄食品を利用し、リサイクルする個人やフードバンクなど各団体の活動のルポは感動的ですらある。
 廃棄されたパンをペレット材と混ぜて燃料に活用するドイツでの試み、レストランや学校給食の食べ残しを豚の餌にリサイクルし、その餌で育った豚肉のブランド化に成功した横浜市の紹介はインパクトが強かった。
 食料廃棄の削減で、我々にできることは多い。賞味期限直前の商品を値引きで売り切る努力もひとつだが、著者は何よりも我々が食べ物を無駄にせず、計画的な買い物を行うことを強調する。大量に食料を輸入し、大量に廃棄する日本人の足元を問い、改善への取り組みのヒントにも富んだ一冊だ。
    ◇
 Stefan Kreutzberger ジャーナリスト。Valentin Thurn 映画監督。
(長谷川圭訳、春秋社・2625円)
◆もう1冊
 T・スチュアート著『世界の食料ムダ捨て事情』(中村友訳・NHK出版)。消費者・生産者を取材し、食料廃棄の実態をルポ。
    --「書評:さらば、食料廃棄 S・クロイツベルガー、V・トゥルン著」、『東京新聞』2013年6月2日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013060202000166.html


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