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覚え書:「高岡重蔵活版習作集 [著]高岡重蔵 [評者]内澤旬子」、『朝日新聞』2013年06月23日(日)付。

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高岡重蔵活版習作集 [著]高岡重蔵
[評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)  [掲載]2013年06月23日   [ジャンル]アート・ファッション・芸能 


■本場顔負けの欧文組み版の技

 ワインのラベルや古い洋書の文字が好きだ。強い主張はないのにきちんと美しい。パソコンで英文を打っても、あの雰囲気は決して出せない。
 きちんと設計された欧文活字書体を使い、伝統的なルールに従い、文字を組み合わせているからだと知ったのは、嘉瑞(かずい)工房という小さな印刷所を訪ねてからだ。
 鉛で鋳造された凸版活字をひとつずつ並べて版面を組む、活版印刷。現在では希少となったが、一昔前までは書籍も新聞も楽譜すらもこの印刷方式で刷られていた。なかでも欧文は、日本語より活字化の歴史が何倍も長く、文字数が少ないこともあり、数千もの活字書体が作り出されてきた。それぞれ製作経緯にまつわる用途があり、混ぜて使うときの相性もあるという。
 嘉瑞工房の相談役である高岡重蔵氏は、今年92歳。デザイナーではなく「一介の欧文組版工」として、レターヘッドやカレンダー、年賀状や小冊子など、沢山(たくさん)の欧文印刷物を、海外に出しても通用する品質で製作してきた。
 ルールや歴史が身についていない日本人が欧文を組んでも、大概の場合どこか野暮(やぼ)ったくなる。海外のレストランで日本語のメニューを見たときのちぐはぐした感じとまではいかないまでも、それと似たことが起きてしまうのだ。
 この本に収められた「習作」たちは、ドイツの書体デザイナー、ヘルマン・ツァップも唸(うな)らせたという、「本場顔負け」の組み版技が光る印刷物ばかり。特に連作は欧文書体と組み版の歴史をたどれるようになっていて、何度見ても見飽きない。著者はどれだけの努力を払ってこれらの知識と技術を身につけたのか。
 巻末の解説から、活字書体の簡単な用途や歴史も学べるけれども、なによりまず著者が窮めた欧文組み版の技を虚心坦懐(きょしんたんかい)に眺めてほしい。美しさを知る人がひとりでも増えて、この技が次世代にも必要とされるよう、切に願う。
    ◇
 烏有(うゆう)書林・3990円/たかおか・じゅうぞう 21年生まれ。欧文組み版工。著書に『欧文活字(新装版)』など。
    --「高岡重蔵活版習作集 [著]高岡重蔵 [評者]内澤旬子」、『朝日新聞』2013年06月23日(日)付。

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[http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013062400003.html:title]


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