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覚え書:「今を生きるための現代詩 渡邊十絲子著」、『東京新聞』2013年07月07日(日)付。


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今を生きるための現代詩 渡邊十絲子著

2013年7月7日


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◆わからなさを慈しむ
[評者]横木徳久=文芸評論家
 昔から多くの「詩の入門書」が書かれてきた。それは詩の読解方法が世間一般になかなか定着しない事情とともに、つねにスタンダードを壊して「今」を剔出(てきしゅつ)していくのが現代詩の本髄でもあったからだ。著者がタイトルに「今を生きるため」と付けた意図もそこにある。
 本書では、絵画、音楽、スポーツなど他ジャンルとの具体的な比較を通じ、また自身の過去の体験も率直に語って、詩の読み方を明らかにしていく。わかりやすく説明され、サービス精神に溢(あふ)れた入門書である。だが、サービスと迎合は違う。著者は「わかりやすさ」に徹しながら、逆に「わからない状態のたいせつさ」「わからなさの価値」を提唱する。
 本書で言及される詩人、黒田喜夫、入沢康夫、安東次男、川田絢音、井坂洋子はいずれも難解な部類の詩人である。ここにも著者の面目がある。また谷川俊太郎の教科書に載っている詩「生きる」を評価せず、むしろ難解な「沈黙の部屋」を評価するところには国語教育批判がこめられている。井坂洋子の詩を通じて、男の詩と女の詩を比較するところには鮮やかな批評性も見える。「わからなさ」と向き合うことで得られる濃密な体験をみずからが示す「入門書」である。
 著者が偏愛する「わからなさの価値」は、「難解さ」への敬意を失った現代社会への痛烈な批判でもある。
 わたなべ・としこ 1964年生まれ。詩人。著書『新書七十五番勝負』など。
(講談社現代新書・798円)
◆もう1冊
 井坂洋子著『はじめの穴 終わりの口』(幻戯書房)。内外の詩作品を、自分史と重ねながら読み解く詩の入門書。
    --「今を生きるための現代詩 渡邊十絲子著」、『東京新聞』2013年07月07日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013070702000181.html:title]

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