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覚え書:「今週の本棚・本と人:『二・二六事件の幻影』 著者・福間良明さん」、『毎日新聞』2013年07月14日(日)付。


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今週の本棚・本と人:『二・二六事件の幻影』 著者・福間良明さん
毎日新聞 2013年07月14日 東京朝刊

 (筑摩書房・2310円)

 ◇映画で読む、変革への欲望史--福間良明(ふくま・よしあき)さん

 戦前最大のクーデター、2・26事件(1936年)は戦後、繰り返し映画化された。関連映画史から、戦後社会が抱き続けた欲望の正体を描いた。「戦前右翼でも、たとえば知識人に影響力を持った原理日本社は、戦後ほぼ黙殺された。なぜ、2・26ばかりが大衆文化で受けてきたのかを明らかにしたかった」

 初の2・26映画「叛乱(はんらん)」(54年)以来、関連映画は事件を起こした青年将校の変革への“情熱”を語り、「銃殺」(64年)以降は彼らと妻らの“純愛”も美化してきた。私的な“情愛”を振り切って行動・理念への“情熱”に向かうという様式美は、一時期の東映やくざ映画にも通じる。「人々は、ああした物語でカタルシスを得てきたわけです。私も、半ば共感してしまう」

 戦後初期から60年代、青年将校の“情熱”は、映画批評でも「浅はかな暴力につながった」と批判されがちだった。背景には、「日本が戦前に逆戻りする」との危機感や、教養主義的な落ち着いた知識人文化を軍部に破壊された記憶があった。

 新左翼運動が激化する60年代後半になると、青年将校の“情熱”は、学生らの権力批判に重なり、肯定的評価も得るようになる。「ただしこの頃も、猪木正道や竹山道雄ら戦前の教養主義の洗礼を受けた保守派論客が2・26再評価を警戒しています」

 さらに80年代以降、2・26事件は、漠とした“何かへの情熱”や“純愛”を描く青春映画の舞台になってゆく。60年代まであった、歴史学の成果とリンクさせた映画批評なども減った。「こうして、物語への陶酔は相対化できなくなったわけです」

 「2・26映画を支えてきた、一気に何かを変えることへの漠然とした憧れは、一部政治家への熱烈な支持や排外主義的なデモなど、昨今の動きにも通じているのではないか」とも。

 かつて2・26映画批判の根拠だった戦争の記憶や教養主義はもはや過去のもの。「だが、以前のありようは想像できる。こうした研究を通し、地道に論点を現代へフィードバックすることが、安易な“情熱”“情愛”を批判的に問うことにつながるのではないでしょうか」<文・鈴木英生/写真・森園道子>
    --「今週の本棚・本と人:『二・二六事件の幻影』 著者・福間良明さん」、『毎日新聞』2013年07月14日(日)付。

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[http://mainichi.jp/feature/news/20130714ddm015070036000c.html:title]


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