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覚え書:「書評:図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情 宮田昇 著」、『東京新聞』2013年6月30日(日)付。


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図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情 宮田昇 著

2013年6月30日


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◆借りて読む楽しみに誘う
[評者]小田光雄=文芸評論家
 宮田昇は戦後出版史における重要な証人であり、『翻訳権の戦後史』や出版太郎名義の出版時評『朱筆』をはじめとして、多くの知られざる事柄を読者に教示してきた。今回の新著はタイトルが示しているように、後期高齢者の宮田が七、八年前から街の図書館に通うようになり、本を借りて読み、それらを通じて体験したり、触発されたりして書いた十七編のエッセイ集だ。本人の言葉を借りれば、「街の図書館通いの随筆」ということになる。
 宮田の著作がそうであるように、藤沢周平、貸本屋経営、アメリカやフランスの出版社など、各エッセイは一編ごとに感興をそそり、評者なりの意見と記述を付け加えたくなるテーマと題材が並び、本当に充実した一冊となっていて、とても八十代半ばの著作とは思えない。戦後の出版業界は宮田のような人々によって支えられてきたのだと、改めて実感する。だから本当はそれらのエッセイをいくつか吟味し、紹介してみたいのだが、ここでは書名やサブタイトルにこめられた意味から一冊の全体像を考え、宮田の図書館に対する視点と思考を取り上げたい。
 宮田は「はじめに」で、一九七〇年代に比べ、公共図書館が飛躍的に増え、貸出総数も十年前の倍の五億冊を超え、日本も欧米並みになったことを記し、そのかたわらで「公立無料貸本屋」という問題提起がなされ始めていることをまず示す。そして図書館をめぐるさまざまな問いを発していくわけだが、一五八ページに集約されるそれを要約すれば、図書館予算減少状況を救うのは利用者による貸し出しの増加、それに伴う図書館の充実であり、一方では情報開示による市民参加型の資料収集保存と幅広い収書だとみなす。
 それに対し、私見も述べておけば、三年前から貸出総数はすでに出版業界の一年間の販売部数を上回る七億冊以上に達している。これも新たなる図書館状況であり、さらなる注視が必要な時期に入っていると思われる。
 みやた・のぼる 1928年生まれ。文筆家。著書『新編 戦後翻訳風雲録』など。
(みすず書房・2310円)
◆もう1冊
 井上真琴著『図書館に訊け!』(ちくま新書)。大学図書館の職員が図書館の利用法や探索上達術、電子書籍利用法などを伝授。
    --「書評:図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情 宮田昇 著」、『東京新聞』2013年6月30日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013063002000168.html:title]


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図書館に通う―― 当世「公立無料貸本屋」事情
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