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覚え書:「書評:アジア力の世紀 進藤 榮一 著」、『東京新聞』2013年08月04日(日)付。


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アジア力の世紀 進藤 榮一 著  

2013年8月4日


◆冷静に説く共生への流れ
[評者]根井雅弘=京都大教授
 歴史の大きな流れを捉えるのは簡単ではない。「アジア力」と聞いても、近隣諸国と尖閣問題や竹島問題などをかかえる日本が「アジアは一つ」(岡倉天心の言葉)のような流れに乗ることができるのか、疑問に思う読者もいるかもしれない。だが本書は、いまや産業競争力の強さで他を圧倒し、二十世紀の「パックス・アメリカーナ」に代わる「アジア力の世紀」が胎動しつつあることを冷静に説いている。
 二十一世紀の情報通信革命によってアジアは「一日経済圏」となり、新しい生産・経営様式(ネットワーク化とモジュール化がキーワード)の確立がアジア型の「ものづくり」文化を生成させた。実際、数字で見ても、東アジアの世界輸入総額に占める比率は二〇一〇年に26%、世界輸出総額に占める比率は同じく31%に到達している。著者はこれを「大アジア力の世紀」の到来と呼んでいるが、論壇には中国脅威論やTPPへの過剰な期待などが繰り返し登場し、必ずしも歴史の大きな流れを捉えていないという。
 地域統合の構築と深化については欧州統合の先例があり、著者はそれを参考に、東シナ海に資源エネルギー共同開発の仕組みをつくること、そして「一つのアジア」を担う次世代を育成することの二つを提案している。もちろんこれらはそう簡単ではないかもしれないが、東シナ海をめぐる小さな領土と資源をめぐって現在のような不毛な争いを続けるよりは、経済合理性からいっても共に利益を享受できるウィンウィン関係をつくりやすいと主張する。
 不安があるとすれば、戦略と謀略のゲームにたけたアメリカの外交力が、ガラパゴス化した日本外交を裏で操る可能性があることだろう(これまでの歴史からこれは決して非現実的ではない)。だが、地域統合の流れを正確につかみ、アジア共生への枠組みを地道につくり上げていく以外にこの国の将来はないという著者の立場は揺るがない。警世の書として一読を勧めたい。
(岩波新書・798円)
 しんどう・えいいち 1939年生まれ。筑波大名誉教授。著書『戦後の原像』など。
◆もう1冊 
 谷口誠著『東アジア共同体』(岩波新書)。東アジア地域統合の重要性と課題を示し、日本の果たすべき役割を具体的に提案する。
    --「書評:アジア力の世紀 進藤 榮一 著」、『東京新聞』2013年08月04日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013080402000177.html:title]


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