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覚え書:「書評:<おんな>の思想 上野 千鶴子 著」、『東京新聞』2013年08月11日(日)付。

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<おんな>の思想 上野 千鶴子 著

2013年8月11日

◆リブ、フェミニズムの現在
[評者]三上治=評論家

 経産省の一角に立つ三つのテント、内の一つは女性用のテントだ。このテントで「未来を孕(はら)む女たちのとつきとおかのテントひろば」行動が提起された。これは少し前のことだが、福島のある女性が原発事故を契機に脱原発運動に加わる中で提示したものだった。「経済(かね)より命」という言葉と共に、脱原発や反原発運動を担ってきた女性たちの主張を象徴するものでもある。

 ウーマンリブやフェミニズム運動として登場した女性たちの自己主張の声も時がたち、声高には聞こえなくなった。社会の表面では見えにくくなったが、その主張は社会に浸透し、こうした動きや言葉となって存在している。

 その女性(おんな)の主張や考えの現在はどこにあるのか。それをリブやフェミニズム、あるいはその先駆になった著作を読み直し、著者が影響を受けたと思われる作家たちの思想を検討しながら、<おんな>の思想の現在が提示される。おんなの思想とは女性たちが社会や家族の場面で置かれている関係、また、それを支配している考え(思想)に異議申し立てをし、そこから解放された立場や考えを主張するものだ。リブ(女性解放)、フェミニズム(女性尊重)はその要約的な表現である。

 石牟礼道子、田中美津、フーコー、サイードら、内外の十一人の性をテーマとした著作が取り上げられる。共通点は現在の男女関係やそれを支配する理念は歴史的なもの、つまりは文化の様式の中で形成されたものであり、自然的な根拠を持つものではないとする考えだ。これは歴史や現在の男女関係が固定的・永続的なものでなく、置換可能なことを意味する。それは私たちの社会現象として表現され、家族や男女関係の変貌として実感できる。

 ただ、女性には現在も依然として<産む><産まぬ>が大事なことだ。森崎和江の「産の思想」と富岡多惠子の「単独者の選択」の間で揺れ動いてきた著者の立場と思想が本書を貫くテーマであり、性差を問わず共感できる。

(集英社・1575円)

 うえの・ちづこ 1948年生まれ。女性学者。著書『近代家族の成立と終焉』。
◆もう1冊 

 ジュディス・バトラー著『ジェンダー・トラブル』(竹村和子訳・青土社)。<女性>という自然的集合性を衝撃的に解体した人文書。
    --「書評:<おんな>の思想 上野 千鶴子 著」、『東京新聞』2013年08月11日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013081102000171.html:title]


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