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覚え書:「日本のタコ学 [編著]奥谷喬司 [評者]荒俣宏」、『朝日新聞』2013年08月11日(日)付。


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日本のタコ学 [編著]奥谷喬司

[評者]荒俣宏(作家)  [掲載]2013年08月11日

■「頭」か「腹」か、から「心」まで

 ここ20年で大飛躍をとげた日本の「タコ学」。その成果を集めた論文集となれば一読せずにいられない。たとえば「タコの体」は、どこが頭でどこが背中なのか? 最新の理解によれば、一般に坊主頭と思われている部分は、内臓が入っているので「腹」。眼(め)と口と脳がある場所は8本足の股座(またぐら)に収まっているが、「頭」に当たる。
 その頭に8本足がくっ付いているから、彼らは「頭足類」と呼ばれる。一方、口がある部分を「体の尖端(せんたん)(前)」とすると、坊主頭の先っぽは体の後端となる。また、ふつうは内臓がある方が腹(表〈おもて〉面)なので、その逆側に付いている足や口は背(裏面)にあると言うしかない。要するにタコと人間の体は別の進化系統に拠(よ)っているのだ。
 ところが、謎だらけのタコの体も、その設計図が腹側に神経を置き背側に内臓を置くという点でクラゲ(刺胞動物)やハエ(節足動物)などと一致している。我々人間を含む脊椎(せきつい)動物だけがその配置を逆転させ、内臓を腹側に置いているのだ。また、食べるための口はどの動物でも体の前方にある。ここまでは設計図が同じでも、タコの場合は肛門(こうもん)が後ろへ行かずに折り返され、口と隣り合う形になる。
 胚(はい)の段階で前後に延びていたタコの神経は両方の端が丸まって脳という塊になる。ここに視覚、五感などの知覚中枢が集まるので、じつは人間とタコの脳は同じプランを持っていることになる。ということは、「心」についても同一の基礎に立つのではないか?
 さぁ大変だ。話はここからタコに人間的な自意識があるかどうか、否、タコの脳を通じて人間の脳のカラクリが解明できるかという哲学的展開となる。本書の後半には懇切丁寧な最新タコ図鑑が付され、イイダコの学名(種小名)決定において江戸の俳諧書『海乃幸(うみのさち)』と『和漢三才図会』が役立った話など、美味(おい)しい話題の大皿盛りである。
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 東海大学出版会・3990円/おくたに・たかし 31年生まれ。東京水産大学名誉教授。『軟体動物二十面相』など。
    --「日本のタコ学 [編著]奥谷喬司 [評者]荒俣宏」、『朝日新聞』2013年08月11日(日)付。

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