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覚え書:「メディア時評 『ゲン』の時代は終わっていない=荻上チキ」、『毎日新聞』2013年08月24日(土)付。


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メディア時評
「ゲン」の時代は終わっていない
荻上チキ 評論家

 松江市の「はだしのゲン」(以下、ゲン)閉架に関するリアクションは、思ったより大きなものとなった。「ゲン」という作品自体が持つ影響力の範囲を確認させられた格好だ。
 同市教育委員会には以前より、特定の「市民」から、「ゲン」の撤去を求める申し入れが繰り返されていた。その模様は、ブログやネット動画などで公開され、既に一部で話題になっていた。「市民」のブログには、「ゲン」に対して「嘘出鱈目反日極左マンガ」「30年以上にわたり日本人に自虐史観を植え付けた」といった記述がある。リンク欄には在特会などの差異とが紹介されており、つまりは、ネット政治運動と連動した歴史認識をめぐる活動が出発点にあったわけだ。
 2012年8月、この「市民」が市議会に「松江市の小中学校の図書室から『はだしのゲン』の撤去を求めることについて」という陳情書を提出。陳情は、全会一致の不採択。しかし12月、松江市の市教委が独自に検討し、「首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」という理由で、閉架措置にするように求めた。
 この一件が明らかになるや否や、メディアが一斉に取り上げた。毎日新聞も8月17日に報じ、20日の社説で取りあげている。ウェブ上では、「自由に読めるように戻してほしい」と求めるネット署名が即座に始まり、4日間で1万5000人超の署名が集まった。署名を呼びかけ文では、「リビジョニスト(歴史修正主義者)達の圧力に松江市教委が屈した」と批判している。一連の騒動が、どのような政治争点の中で取りざたされているかを浮き彫りにする一文だ。
 小中学生の頃、僕が「ゲン」を読んで真っ先に抱いたのは「こんな時代でなくてよかったな」という感想だ。原爆の威力、空襲、飢餓等が恐ろしかったこともあるが、最も怖かったのは、特定の意見や行動に同意しない者を「非国民」とののしることが是とされる、「特定の空気に熱狂する人々」の姿だった。
 そして僕は、すぐに思い知る。「こんな時代」は決して終わってはいなかったことを。今でも、気に食わない者に対して「非国民」「売国奴」といった言葉で罵倒する者がたくさんいる。発端の「市民」ブログにも、「売国奴」等にとどまらず、ネットでしばしば見る排外的な言葉が躍っていた。「ゲン」が過去になる日は遠い。メディアには、「ゲン」を反戦マンガとしてのみとらえて賛否を問うのではない報道を期待したい。(東京本社発行紙面を基に論評)
    --「メディア時評 『ゲン』の時代は終わっていない=荻上チキ」、『毎日新聞』2013年08月24日(土)付。

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