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覚え書:「書評:パリ大全 エリック・アザン著 杉村昌昭訳」、『東京新聞』2013年08月25日(日)付。


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パリ大全 エリック・アザン著 杉村昌昭訳

2013年8月25日

◆積み重なる時と人を透視
[評者]雑賀恵子=評論家

 整備中の新橋-虎ノ門を通る環状2号線(新虎通り)が「シャンゼリゼ通り」になるという。いや、それを手本に、歩道の幅を最大級に広げ、街路樹やオープンカフェを設置するという話だ。十五年ほど前には、京都の鴨川に、パリのポンデザール(芸術橋)を模した歩道橋を架けるという計画もあった。こちらの方は、激しい議論の末に撤回されたが。おおシャンゼリゼ、空の下セーヌは流れ、恋と革命、芸術家たちの夢、花の都、ふらんすへ行きたしと思へども…。なんと、わたしたちはパリに憧れてきたことだろう。

 パリは輪郭のくっきりした街だ。東京が桑の葉を食べる蚕のように絶えざる運動を続けて増殖していくのとは逆に、脅かされ、包囲され、侵略されてきたために、大昔から城壁に閉じ込められている。だから切れ目のない同心円状の層の広がりとして発展するしかなかったという。だが、街路の舗石をめくれば、無数の時の顔が砂粒となって拡(ひろ)がっている。

 著者は、パレスチナ生まれの母とエジプト系ユダヤ人の父の子としてパリで生まれた。外科医として活動しつつパレスチナ連帯や反民族差別運動にかかわり、さらに出版社を立ち上げて、精鋭な良書を出し続けている。多彩な経験と豊富な知識をもった著者が、セーヌ川を挟んだ新旧のパリの街区や通りをゆっくりと歩きながら、幾層にも積み重ねられた時代の薄皮をはぎ、過去と現代の出来事と、市民や移民、作家や芸術家など、パリに生きた人々とを同時に透視したのが本書である。

 王政時代の鮮魚売り場の喧噪(けんそう)、回廊式の墓地、フランス革命の熱狂、劇場や賭博場や刑場、ユゴーやバルザックやピカソ、五月革命をめぐる議論…。数えきれない生者も死者もパリの断片だ。膨大な記録や評論、歴史を彩る小説や映画などから記憶のピースが集められ、緻密に相応(ふさわ)しい場所へと貼り付けられて、立体的なパリというジグソーパズルが、色鮮やかに立ち上がる。

(以文社 ・ 4725円)

 Eric Hazan 1936年生まれ。フランスの著述家。著書『占領ノート』など。
◆もう1冊 

 ベルナール・ステファヌ著『図説 パリの街路歴史物語』(上)(下)(蔵持不三也編訳・原書房)。パリの街路にまつわる歴史や文化のガイド。
    --「書評:パリ大全 エリック・アザン著 杉村昌昭訳」、『東京新聞』2013年08月25日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013082502000183.html:title]


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