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覚え書:「今週の本棚・この3冊:沖縄と東北をつなぐ=大城立裕・選」、『毎日新聞』2013年08月25日(日)付。


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今週の本棚・この3冊:沖縄と東北をつなぐ=大城立裕・選

毎日新聞 2013年08月25日 東京朝刊

 <1>福島に生きる(玄侑宗久著/双葉新書/840円)

 <2>「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか(開沼博著/青土社/2310円)

 <3>東日本大震災歌集(現代歌人協会編/500円・送料別=03・3942・1287)

 玄侑宗久『福島に生きる』は、福島に土着する、素朴に福島を愛する人の、震災から原発事故にかけての、純粋な怒りにみちた著作である。ただ、その怒りは、著者が僧侶であることとも関わって、普遍的な全人類的な、文明のための怒りに通じている。震災への政府の対応が官僚的に場当たり、時間稼ぎのものに見えるとき、歯に衣(きぬ)着せない批判、抗議となり、原発被害に発展して、人間から動植物に及ぶ滅亡の危機を見ると、日本の、あるいは全人類的な文明(経済の流通を含めて)に説き及ぶものになる。

 開沼博『「フクシマ」論』は、副題を「原子力ムラはなぜ生まれたのか」とするが、3・11には大学の修士論文として脱稿していた、という恐るべき予言の書である。予言を可能にしたのは、著者が福島の出身でありながら、東京の大学で社会学を学んだからである。故郷で起きている社会的現実を内と外から構造的に分析しているのだ。そこで検出されたのが、日本の中央のための地方支配である。悲劇をクールに見据えた真実! これは期せずして、沖縄の基地被害の真実と同じであることが、開沼氏と私が2011年7月に対談(東京新聞)をした機会に言及、発見された。

 現代歌人協会では、大震災をテーマにした作品を会員から募集して編集した。ジャンルの性質上、情念的な捉(とら)え方が主流になるが、どの作品にも真実が溢(あふ)れるなかで、私の感動度ベスト3は、1「半身を水に漬(つ)かりて斜めなるベッドの上のつつがなき祖母」(宮城県、梶原さい子)、2「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」(沖縄県、俵万智)、3「被災者の思ひに届かぬ歌反故(ほご)の嵩(かさ)張りてをり三月十一日」(沖縄県、屋部公子)。

 期せずして災害との距離の取り方の3種類が出ていて、1現場、2現場からの逃避、3まったくの遠距離、という差がある。2では情念と社会性とが深く絡み合っている。3は作者が作歌の技巧に及びかねているほどの素朴な表現ながら、沖縄での平均的な受けとめかたが見られ、「遠距離のシンパシー」はいかにして可能かと問いたくなる、どうしようもない真実がある。

 歌集は断片の寄せ集めながら、大震災にたいする全国民の受け止め方の総合を象徴化して見せる。そしてそれが、玄侑作品の裏返しの(それ自体が語る)文明批評をなす。この発見こそが、悲劇からのせめてもの収穫であろうか。
    --「今週の本棚・この3冊:沖縄と東北をつなぐ=大城立裕・選」、『毎日新聞』2013年08月25日(日)付。

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[http://mainichi.jp/feature/news/20130825ddm015070014000c.html:title]


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