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吉野作造と南原繁における「新生の経験」


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吉野作造と南原繁を対比していくといくつか共通点を見出すことができるのですが、その一つは、ふたりとも、共同体から嘱望された将来を、キリスト教入信期の青年期に否定していること。

現代の眼からみれば、二人とも東京帝大教授だから「末は博士か大臣か」の立身出世エリートの模範ですよといわれそうだけど、そう短絡的でもない。

吉野作造の場合、郷土の育んだ英才ともて囃されながら、大学以降、学問に嵌ったキワモノ扱いされ(〔それには理由があるけど〕困窮と非国民的態度)、勉強しすぎると吉野さんチのサクゾーさんみたいになるよと手のひらを返されている。勿論、吉野自身は歯牙にもかけないが、用意されたコース(国家からすばらしき人材とほめられることを素直に肯定する態度)は否定している。

今でこそ、吉野作造記念館もたち、吉野の正面からの評価(限界のある大正デモクラシーのそれでしょwみたいな)ものが再認識されつつあるのは喜ばしいことだけど、つい数十年前は、吉野よりも立身出世の見本の如き弟の吉野信次(官僚を経て政治家)が評価されていたという話もあるからねえ。単純でない。

さて宮城から目を西に転じると讃岐生まれの南原繁が目にとまる。没落した旧家の生まれで、勉学に精励した繁は、一家の再興という期待を一身に背負うことになった。しかし煩悶青年は、自殺を選ぶのではなく、その生き方を全否定し、「真理に生きる」ことを選択する。

属性によって、国家の描き出す嘱望された人材と「同じ」と措定することはたやすい。しかしその中身に踏み込んでみると、「かくあるべし」という他律的なものを一旦、否定したうえで、自身の生き方を定め直しているから、「同じ」と措定することは不可能のように思われる。

その経緯で、キリスト教信仰が介在し、これまでの生き方を否定したうえでの「新生」が可能になる訳なのだけど、そういう「超越」の介在もまた、所詮は「浮き世の根無し草」に過ぎない国家や愛国、そういった属性が相対化され是々非々、批判の対象として捉え直された来た(公共哲学の萌芽)ということなのではないだろうか。

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