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「今週の本棚・本と人:『新編 天才監督 木下惠介』 著者・長部日出雄さん」、『毎日新聞』2013年09月22日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『新編 天才監督 木下惠介』 著者・長部日出雄さん
毎日新聞 2013年09月22日 東京朝刊

 (論創社・3150円)

 ◇正義と家族愛をいま、改めて--長部日出雄(おさべ・ひでお)さん

 映画をこよなく愛する作家が、「本当の人間」を描くことにこだわった映画監督の生誕100年を機に、かつて刊行した評伝に大幅加筆して再び世に問うた。その理由をあとがきでこう記している。<一度舵(かじ)取りを誤れば重大な危機に陥りかねない時代の急流に差しかかった今、木下惠介の生き方と考え方と残した作品の数数には、極めて貴重な示唆が少なからず籠(こ)められている>

 日本初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」や「喜びも悲しみも幾歳月(としつき)」など人生の苦しみと喜びを描いた木下だが、同時代の黒澤明や小津安二郎と比べて忘れ去られている気がするという。彼らと比べて、木下作品はコメディーからシリアス、ホームドラマ、晩年の社会派まで多岐にわたり作風は一貫しない。ただ、いずれにも共通する思想が流れていた。

 「それは正義であり、家族愛でした。若い頃にはうっとうしく感じて、距離を置いた。1998年の暮れに木下が86歳で亡くなり、その正月はずっと彼の作品をビデオで見て過ごし、『ああ、俺は木下が好きなんだ』とつくづく感じたのです」

 作品に通底するヒューマニズムは、老境に入った作家の心を強く揺さぶった。さっそく取材と資料収集を開始。幸いに監督の人となりを直接知る人物が多く存命しており、6年がかりで出版にこぎつけた。それから8年。この国を覆う風潮を考える時に“木下イズム”の重要性を感じ、改めて筆を執った。

 「家族の理由なき殺人などが頻発している。道徳観念の欠如です。35年も前、木下は『古い』『大時代的だ』と言われながらも敢然と時流に反して、『衝動殺人 息子よ』を作った。この先見性はすごい」

 「二十四の瞳」を話題にした時だった。突然、著者は私の前で嗚咽(おえつ)した。貧しいために上の学校に進めず、肺病で奉公先から帰され、家の納屋に独り放置されて早世する少女。そうした悲話はかつて珍しくなかった。

 「木下作品は忘れられてはいけない。その本質と魅力に多くの人が触れるきっかけになればうれしい」<文と写真・中澤雄大>
    --「今週の本棚・本と人:『新編 天才監督 木下惠介』 著者・長部日出雄さん」、『毎日新聞』2013年09月22日(日)付。

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[http://mainichi.jp/feature/news/20130922ddm015070026000c.html:title]


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