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覚え書:「書評:思想課題としての現代中国 革命・帝国・党 丸川 哲史 著」、『東京新聞』2013年9月1日(日)付。


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思想課題としての現代中国 革命・帝国・党 丸川 哲史 著

2013年9月1日

◆近代化への欲望 読み解く
[評者]羽根次郎=愛知大助教
 領土問題とは恐ろしいもので、自国領有権への無条件承認という厳しい踏み絵を国民に迫る。子どもの頃に大人から言われた「喧嘩両成敗(けんかりょうせいばい)」の道徳は何だったのかと首を傾(かし)げたくなる。相手の言い分に耳を貸すことすらしない、そんな不道徳な相互不信が「愛国」に映る状況をどう考えるべきなのか。
 本書ではその「相手の言い分」が、思想的レベルに濾過(ろか)して紹介される。しかも、領土問題は議論の契機であって、行論の射程は中国そのものを問う水準-中国とは単なる一国家なのか?に達している。国家とは「外部」からの影響の中で歴史的に形成されるものである以上、歴史と対外関係への探求に紙幅が割かれている。
 日本の言論空間では近代とは批判の対象として扱われがちである。しかし、(半)植民地経験を持つ発展途上国にとり、近代化とは歴史と民衆の期待の産物である。中国では、民族的自己改造たる近代化が「救国」をもたらす、という政治経済双方を貫くテーゼの実現者こそ「党」であった。一方、「救国」の国土保全は清代の版図継承という帝国的課題と表裏の関係にあった。帝国特有の多元的な社会を結合するには、抽象性の高い政治言語、つまり「帝国」の言語を「革命」が引き受けざるをえなかったと考える本書の文化政治分析は面白い。
 さらに、「党」を近代化のエンジンと見なす慧眼(けいがん)によって、「中国革命」とは政治目的にとどまらぬ近代そのものへの追求であったと論じられているのも新鮮だ。中国国民党と中国共産党とを同一地平で議論しうることで脱構築されていく中国像は、中国にとっての「領土=主権」の意味を近代化の観点より理解する必要を読者に気づかせてくれる。それは領土問題のみならず、文革や天安門事件をはじめとする多種多様の問題を理解するための新しいモデルをも読者に提供している。中国へのアクチュアルな関心を持つ読者にぜひ薦めたい一書である。
(平凡社・2940円)
 まるかわ・てつし 1963年生まれ。明治大教授。著書『魯迅と毛沢東』など。
◆もう1冊 
 汪暉(ワンフイ)著『世界史のなかの中国』(石井剛ほか訳・青土社)。文革・琉球・チベットという視野から中国の歴史や日中関係を考える。
    --「書評:思想課題としての現代中国 革命・帝国・党 丸川 哲史 著」、『東京新聞』2013年9月1日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013090102000163.html:title]


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