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書評:新海均『カッパ・ブックスの時代』河出ブックス、2013年、+α


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新海均『カッパ・ブックスの時代』河出ブックス、読了。本書は高度経済成長期、数々のベストセラーを送り出したカッパシリーズの歩みとその内実を、シリーズ終焉に立ち会った元編集者が振り返る。新書のはしりは岩波。アンチ教養主義を掲げ大衆実学主義が受け、ミリオンセラーは17点(岩波は2点)。

シリーズ成功の鉤は創始者神吉晴夫を抜きには語れない。「創作出版」の手法がシリーズを発展させ、新しいジャンルを開拓した。出版人の努力と熱意には頭が下がるが、本書はその生臭い裏面史にもメスを入れる。衰亡史は読み応えがある。

シリーズは2005年に新刊の刊行を停止。「カッパは、いかなる権威にもヘコたれない。非道の圧迫にも屈しない」。その血を引き継いだ編集者は別の天地で新しい挑戦(「カッパのDNA」)というが、その魂は如何? 儲けと文化を考えさせれる好著

(以下は蛇足)
先に、ミネルヴァ書房の『岩波茂雄』伝を読んでいたので、ホントにクリアになったけれども、講談社というDNAというか……、出版業界は浮き沈みが激しいだけに、文化創造と儲け(“武士は食わねど高楊枝”)のバランス感覚は難しいと思う。

ただ、オームドレットルとしてのベンヤミンのいう「文」の意義をふまえるならば、やはり、講談社的なるもの……と一慨には言い切れないし、岩波文化に問題がないのかと言われればNOとは言い切れないのは承知だけど……その最大手出版社は「文化」を作ったのかといえば、疑問は残るところ

しかし、カッパブックスの光文社は、週刊新潮のうえをいくゴシップ女性雑誌の先駆けの出版社でもあるわけで、しかし、その創世~揺籃期を、ルポライターとして駆け抜けたのが“えんぴつ無頼”竹中労先生でもあるわけで、まさに丸め込まれない以上の、果敢な内在的抵抗というのもあるわけで。

カッパブックスといえば、「話はんぶん」というのが常で、加えて、岩波式の旧制高等学校式の教養主義が良いわけではないけど(南原繁は以外にもその批判者)、かつてはある程度、出版社によって、「そういうものだ」というのが先験的に把握できたけど、カッパな編集者が飛び出した後は戦国時代ですねえ。

勿論、カッパシリーズと入れ替わるようにはじまった光文社新書にもいい作品は多いし、古典新訳文庫は、古典と向き合う新しい気風を薫発している。これはプラスだけど、ホント、朝日新書やら講談社現代新書で「カッパブックス」が出るようなご時世だけに、読み手は大変なのではあるわけでして。


カッパシリーズの生みの親・神吉晴夫は、労働争議などを経て、光文社を後にして、かんき出版をつくるのだけど、webにおける、その書物のジャンル分けで「人文科学」と「自己啓発」が同列に扱われているのだけど、これは、やっぱりちゃうでw

[http://www.kankidirect.com/np/index.html:title]

(以下は、ミネルヴァ書房の『岩波茂雄 低く暮らし、高く想ふ』短評)

十重田裕一『岩波茂雄 低く暮らし、高く想ふ』ミネルヴァ書房、読了。「文化の配達人」の現時点における最も完成度の高い評伝。教員を経て古書店の開業から今年で百年。良書を選んで売る姿勢は、価値ある仕事を掘り出し世に問う岩波書店のスタイルへ。図版、年表等資料も充実。人から見る日本出版史。

〔ここがポイント〕 ・激動の明治から昭和を生きた出版経営者の生涯を通じて日本のメディア史を読み解く ・「講談社文化」と並ぶ「岩波文化」がいかにして築かれていったかがよくわかる。 [http://www.minervashobo.co.jp/book/b120776.html:title] 素晴らしい仕事です


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