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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 『中断』か『転換』か リーマン・ショック5年=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年10月02日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
社会活動家 湯浅誠

「中断」か「転換」か
リーマンショック5年

 2008年9月のリーマン・ショックから5年がたった。現段階で振り返れば、あれは「転換」ではなく「中断」だった、ということになるだろう。
 リーマン・ショックの直後、米国ではオバマ大統領が登場した。キーワードは「チェンジ」。就任演説でオバマ氏は「ハゲタカ資本主義」との決別を宣言し、中間層の生活保障である医療保険制度改革(通称オバマケア)の導入実現に力を入れた。
 しかし、オバマケアは苦戦した。改革法は当初案より後退した形で成立したが、下院で多数を占める共和党は現在、政府の資金繰りに不可欠な連邦債務上限引き上げと引き換えに、法の実施延期を要求している。「オバマケアは社会主義的」というのが、批判の論法だ。
 一方、日本でも09年に民主党政権が誕生。鳩山由紀夫首相は「家計への直接支援」をうたい、子ども手当や高校授業料無償化の実現を約束した。分配の方法そのものに手をつけようとしたのだが、こちらも厳しい批判を浴びることになった。
 日本の場合、批判の論法は「バラマキ」だった。子ども手当は所得制限のある児童手当に戻り、高校授業料無償化も同様の経過をたどろうとしている。
 世界には、高校どころか、大学授業料でさえ無償の国はいくつもある。そこから見れば「バラマキ」批判は奇妙に見えるだろうが、その声が大勢を占めることはない。それが「国柄」ということだろう。
 今や全世界がこぞって金融緩和を行っている。市場に大量のお金が流れ込み、投資先を探して世界中を駆け巡る。民需を刺激し、企業活動を活性化させることでしか、景気回復は果たせない。そして、成熟国家・日本は所得収支で稼ぎ、個人は資産形成によって生活防衛を果たすしかない。貯蓄から投資へ。かつての個人国債は今、小額投資非課税制度(NISA)となった。
 「政治が企業の活動を応援すれば、企業の業績が上がって家計を潤し消費が拡大して税収も増える。だから派遣労働の常態化も解雇規制特区も、企業活動に資する限り甘受すべきだ。企業が潤うことが、家計が潤うためのただ一つの方法だ」
 「普遍的給付は悪平等とモラルハザードを生むだけのバラマキ。公費を使う対象は、自力で生活が成り立たない高齢者や障害者ら『真の弱者』に厳密に絞り込まれるべきだ」
 日米両国でのこんな思考の岩盤が、一瞬揺らいだに見えたのは幻だったのか。そうかもしれないが、歴史適評が定まるのに、5年は短過ぎる。
 5年後に同じ問いを発してみたい。あれは「転換」だったのか「中断」だったのか--と。
ことば:リーマン・ショックの影響 輸出業を中心に日本経済に打撃を与え、製造現場で働く派遣社員の大量解雇が行われた。職住一体の働き方があだとなり、その日の糧を求める人が「派遣村」や役所に押し寄せた。企業に余力がなくなった時、労使関係において圧倒的弱者である派遣社員がどのように扱われるか学んだはずだった。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 『中断』か『転換』か リーマン・ショック5年=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年10月02日(水)付。

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