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覚え書:「書評:風に吹かれて 鈴木 敏夫 著」、『東京新聞』2013年10月06日(日)付。

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風に吹かれて 鈴木 敏夫 著

2013年10月6日


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◆ジブリを担う人の立脚点
[評者]切通理作=批評家
 宮崎駿作品で知られるスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫に迫ったロングインタビューである。
 出版編集者と二足の草鞋(わらじ)を履いていた鈴木のジブリ勃興期の話題や、ジブリの両輪である宮崎駿、高畑勲監督との裏話については、鈴木本人が既に単独著書でつづっている。本書のインタビュアー・渋谷陽一は、プロデューサー以前の時期から鈴木敏夫の人物像を掘り起こそうとする。
 鈴木が大学時代に新聞社を受けた際、最終面接で新聞の社会的責任を問われ、「そういうものはないと思います」と答えて落とされたということを渋谷は聞き出す。どうしても立派なことを言いたくないという、建前を嫌う真摯(しんし)さが窺(うかが)えるエピソードとして。
 また、周囲から優秀だと言われながらも「勉強したくなかった」少年時代の鈴木から、<鈴木敏夫が鈴木敏夫になろうとしていて、なれないもがき>を感じ取る。渋谷は鈴木よりやや年齢が下だが、「団塊の世代」だ。社会の変革に重ね合わせるようにして個人の変革が問われ始めた時代に、青年期を過ごした二人。
 いまや日本映画の興行記録を塗り替え、世界的な評価と注目を集めるジブリ作品を製作者として担う鈴木だが、そこで底流にあった思いも「当事者になりたくない」ということだった。自分のやっていることを自分で面白がるという構えと、あくまで宮崎駿に惚(ほ)れ、宮崎のためにジブリを作ったという個人的な立脚点を鈴木は語る。
 だが渋谷は、作り手の後ろに居る<神>に迫ろうとする。「当事者でいたくない」と言う鈴木から、創作の神に向き合う当事者としてのあり方を浮かびあがらせようとする。
 団塊世代の若い頃に流行(はや)った、ボブ・ディランの歌と同じ名前を持つこの本。世界の「風」に個人がどう処していったのか、人と時代が出会うことで生まれるものとは何かについて、真摯な問いかけを繰り返す一冊である。
(中央公論新社・1890円)
 すずき・としお 1948年生まれ。アニメプロデューサー。著書『映画道楽』。
◆もう1冊
 宮崎駿著『折り返し点』(岩波書店)。エッセイやインタビューで「もののけ姫」から「崖の上のポニョ」までの創作の秘話を語る。
    --「書評:風に吹かれて 鈴木 敏夫 著」、『東京新聞』2013年10月06日(日)付。

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