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覚え書:「今週の本棚・この3冊:ふるさと会津=唐橋ユミ・選」、『毎日新聞』2013年10月20日(日)付。

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今週の本棚・この3冊:ふるさと会津=唐橋ユミ・選
毎日新聞 2013年10月20日 東京朝刊

 <1>幕末会津の女たち、男たち(中村彰彦著/文藝春秋/1470円)

 <2>名君の碑(中村彰彦著/文春文庫/960円)

 <3>炎は消えず 瓜生岩子物語(廣木明美著/文芸社/1470円)

 日々の仕事を通して出会う人たちとの会話で出身地の話題から話が広がることが多くあります。その中でよく返ってくる言葉が、会津の女性は強いということ。大河ドラマでの新島八重のイメージなのかもしれません。八重の生涯を中心に書かれた『幕末会津の女たち、男たち』は、白虎隊や会津藩家老西郷一族の自刃の真実、斗南(となみ)藩への移住の悲劇など、子供の頃から聞かされていた戊辰(ぼしん)戦争での会津の人々の悲劇的な運命を、今一度しっかりと読み直す良い機会となりました。

 会津人の気質として「功を語らぬ」とよく言われます。そのために、大きな歴史の流れから埋もれてしまっている偉人が八重だけでなく他にも多くいます。『名君の碑(いしぶみ)』で描かれた保科正之も、会津では素晴らしい人格をもった名君として知られてきました。江戸で起きた振袖火事とよばれる大火で焼け出された多くの被災者に、会津藩が抱えていた社倉米(飢饉(ききん)などにそなえた備蓄米)をすべて惜しみなく供出した史実が、最近ようやく注目されてきているのは、会津人としてとても誇らしく感じます。

 会津の北の方、喜多方市で育った私は、瓜生(うりゅう)岩子(いわこ)という名前を幼いころ何度も聞かされました。祖母や母は、岩子お婆ちゃんと親しみをこめて呼ぶのです。瓜生岩子は、戊辰戦争で、敵味方分け隔てなく傷病兵を介抱しました。そして逃げのびて路頭に迷った貧民や孤児、老人などを身銭を切って救済し、養護施設などを作った、日本のナイチンゲールと言われる女性です。

 『炎は消えず 瓜生岩子物語』での岩子は、会津女性らしい忍耐強さだけでなく、目を見張るほどの行動力を見せます。道路開削工事のやり方に問題が生じ、農民が不当な扱いを受けていると知れば、面識のない政治家のもとへ足を運び直談判をする。災害時には、被災を逃れた人たちに、慈しみの輪を広げ被災者への援助を働きかけました。岩子は、東日本大震災で大きく広がったボランティア活動のいわば先駆者として、再び世に知られるようになったのです。

 「私は自分のしたいことをし、自分がしなければならないと思ったことをしたにすぎない」。岩子には、相手と同じ目線になって理解し合おうとする温かさと粘り強さがありました。

 岩子お婆ちゃんは、テレビやラジオに携わる私に、いつも大切なことを教えてくれるのです。
    --「今週の本棚・この3冊:ふるさと会津=唐橋ユミ・選」、『毎日新聞』2013年10月20日(日)付。

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[http://mainichi.jp/feature/news/20131020ddm015070010000c.html:title]


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