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不安で一杯の人間は、問うことも抵抗することもせず、自分の生活の基盤(自由や権利)に対する侵害を受け入れてしまいます


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 自然と伝統というあらかじめ所与として存在していた安全が失われたリスク社会においては、不安というものが、共同体の新しくて壊れ易い紐帯となります。わたしたちはそこで不安共同体の感情性と非合理性が生まれているのを見ますし、そのような感情性と非合理性は、ラディカルな決着と境界画定運動にとって極めて有益な土壌でありうるようになります。テロの脅威を政治的、軍事的に規定することは、これらの不安にはけ口を与え、焦点を与えます。そして、このようにして、自分の境界の内部や外部に何物かに対する戦争のための支援の波は、絶えず新しく生み出され続けていきます。不安で一杯の人間は、問うことも抵抗することもせず、自分の生活の基盤(自由や権利)に対する侵害を受け入れてしまいます。
    --ウルリッヒ・ベック(島村賢一訳)『世界リスク社会論 テロ、戦争、自然破壊』 ちくま学芸文庫、2010年。

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「全てはあなたの責任です」。

新自由主義のワンフレーズ政治は、「自己責任」を根拠に、すべてを“勝ち組”“負け組”の二元論で理解する国家主導の歪んだ経済市場主義こそ、財政をはじめとする内政・外政の諸問題解決の切り札かのように錯覚させましたが、ほんとうに「全てはあなたの責任」なのだろうか。

一人の人間の努力は美しいし、大事なことは否定しない。しかしながら、そのひとに関わるすべてのコトガラが「いま・そこ」に生きている一人の人間に還元できるのだろうか。おそらくそれは無理だろう。

名目としての「大きな政府」が万能というわけではないけれども、緊縮化が成功したのかといえば、それもおそらく錯覚で、アメリカ主導への再編というグローバリズムの外圧が社会の液状化を招き、国家のリストラともいうべき自体を必然とした。

そうしたとき、内向きな右旋回によって、紐帯を強化し、復古的再編を図ろうという論調が強化されているが、これも最終的にはご破産となる公算が高い。もはやひとびとは、不可能なほどにくたびれているし、その目指すところは、強い者だけが都合良く生き残っていく歪なピラミッド型の紐帯システムへの再編というところがその実なのだろうと思う。

しかしながら、そうしたとき、そっと落とし込まれるのが、一見すると、「安全」を保障するかのように見せかけ、人間の自由を奪おうとする暴挙。

治安が悪いからといえば、監視カメラが何の抵抗もなくどんどん増設されていく。現実に外交衝突は相互に不利益であることなんて分かり切ったことなのに、特定の、喫緊には不要な部門に財政投入されることが肯定されていく。

「不安で一杯の人間は、問うことも抵抗することもせず、自分の生活の基盤(自由や権利)に対する侵害を受け入れてしまいます」。

消費税が8%への引き上げが決定とのこと。法人税は減少の由。経済政策をインフレを目指すとか。

果てさてどこへ行くのやら。

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