書評:神島裕子『マーサ・ヌスバウム 人間性涵養の哲学』中央公論新社、2013年。
神島裕子『マーサ・ヌスバウム 人間性涵養の哲学』中公選書、読了。アリストテレス研究からスタートし、貧困や女性などへの差別へ視野を広げた気鋭の哲学者ヌスバウム。本書は彼女の半生と思想(ケイパビリティ・アプローチ/政治哲学/フェミニズム/新しいコスモポリタニズム)を明らかにする。
本書の白眉は第四章「書評家ヌスバウム フェミニズム文脈のなかで」。国際関係論から人間へ注目する中でのバトラー批判とスピヴァクとのやりとりだ。彼女の知的誠実さをかいま見ると共に、リベラリズム再構築への真摯さが感じられる。
巻末にはインタビューを収録。「私は哲学に人生の多くを費やしていますが、私の人生における愛、友情、美しさ、音楽といったものすべてが私の哲学に反映されているのです」。人柄を知る上でも貴重な資料。本書は格好の水先案内人。
(帯)「人生の豊かさを取り戻す 現代を代表する哲学者は、人間と社会をどう捉えているのか。新アリストテレス主義、政治的リベラリズム、コスモポリタニズムという三つの軸からその思想の内実に迫る」。
[http://www.chuko.co.jp/zenshu/2013/09/110017.html:title]

中央公論新社
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