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書評:N・ファーガソン(櫻井祐子訳)『劣化国家』東洋経済新報社、2013年。


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N・ファーガソン『劣化国家』東洋経済新報社、読了。「なぜ豊かな国が貧困へと逆戻りするのか?」。西欧がトップに立ち続けた二つの要因は民主主義と資本主義、法の支配と市民社会というの4つのエンジンを実装した国民国家。その劣化を前に開発独裁の如き妖怪が注目を集めるが著者は一蹴する。

西欧が成功する要因となった制度は深刻な危機を迎えているのは事実だ。著者は、アダム・スミスといった古典からクルグーマンに至るまで--新旧の思想を現実とすりあわせながら劣化要因を腑分けし、未来を展望する。

民主主義国家の運営は国債に依存するが、世代間の社会契約の意義を見失い、複雑化する規制が資本主義の危機を招き、「法の支配」が「法律家の支配」にすり替わってしまうとき、市民社会の枠組みとしての国家は劣化・破綻する。

トクヴィルは自発的かつ多様なソーシャルキャピタルを市民社会の基盤と見たが、劣化しつつある。加えて、階級分断の格差社会が、西欧を「劣化国家」に変容した。だとすれば、市民社会の単位の認識を更新する必要もあろう。

領域性国民国家を単位とする主権国家はもはや成長の主役たり得ない。著者は『文明』(勁草書房)で「西洋が覇権をとれた6つの真因」(副題)をマクロに描いた。本書はその転換期をミクロな視点で描き出す。浮かび上がる衰退の本質は他人事ではない。


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