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覚え書:「書評:忘却のしかた、記憶のしかた ジョン・W.ダワー 著」、『東京新聞』2013年10月27日(日)付。

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忘却のしかた、記憶のしかた ジョン・W.ダワー 著

2013年10月27日


◆戦時日本人の心情に迫る
[評者]成田龍一=日本女子大教授
 『敗北を抱きしめて』で、あざやかに占領下の日本を描きだした、アメリカの日本史家の歴史論集である。長短合わせて十一編の論文が収められるが、主として二十世紀の日本を対象とし、アジア・太平洋戦争や日本占領、原爆などを論じ、日本とアメリカとの関係、戦争と平和について考察する。
 このとき、ダワーの関心は、戦時の日本を逸脱とし、それを単純に裁断するのではない。戦時の「日本の体験」は、どの程度まで「より進んだ国々の行動を照らしだすのか」、また、後者の視点からみたとき、戦時日本がいかにみえるかを探求することにある。
 そのため、たとえば「日本人の受苦の聖像(イコン)」としての広島・長崎の原爆投下も、憤怒や悲惨・屈辱とともに、「科学と技術が欠如していた」という態度を生みだし、日本人は核戦争の恐怖と科学への「明るい見こみ」をもったと指摘するなど、考察は陰影に満ちている。現代史の多様性、複雑さが、存分に描きだされていく。
 ダワーは「日本のおこないを放免することなく、『日本問題』を理解するというジレンマ」を意識しながら、叙述をおこなう。ベトナム戦争からイラク占領までのアメリカの行為が視野にあり、「戦後のアメリカの侵略」と「戦前の日本の侵略」を重ね合わせるように考察する。そのため、ある章ではアメリカのイラク占領と、日本による「満州侵略」と「満州国の創設」が比較の素材とされている。むろん、戦争認識をめぐっての「日本特有の『愛されない能力』」も見逃されてはいない。歴史家としてのダワーの認識の深さが、いかんなく発揮された一冊である。
 大きな文脈と小さなものへのまなざし、国際関係の論理と人びとの心情への接近、学問理解と人道的な関心が、本書を貫いている。そして、複雑な関係を単純化せずに語るその文体は、深みを有している。日本語訳も、そうしたダワーの認識をみごとに現しており、歴史の余韻を感じさせる。
(外岡秀俊訳 岩波書店・3150円)
 John W.Dower 1938年生まれ。日本史家。著書『昭和』など。
◆もう1冊 
 丸山真男著『戦中と戦後の間』(みすず書房)。戦後の代表的政治学者が二つの特異な時代を反映する思想を読み解くエッセー集。
    --「書評:忘却のしかた、記憶のしかた ジョン・W.ダワー 著」、『東京新聞』2013年10月27日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013102702000171.html:title]


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忘却のしかた、記憶のしかた――日本・アメリカ・戦争
ジョン・W.ダワー
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